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神戸のベンチャー 「循環葬」提案 遺骨を山林へ 新たな葬送 収益一部、環境保全に


神戸のベンチャー 「循環葬」提案 遺骨を山林へ 新たな葬送 収益一部、環境保全に (上)大阪府と兵庫県にまたがる妙見山で区分けされた遺骨の埋葬スペース=10月(下)妙見山にある埋葬スペースの入り口に立つ「at FOREST」の代表取締役小池友紀さん=10月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 神戸市のベンチャー企業「at FOREST」が、墓標を立てずに遺骨を山林に埋める新しい葬送を提案している。骨は土に返り自然のサイクルに取り込まれるとして「循環葬」と命名し、収益の一部は森林保護に当てる。2023年6月のサービス開始後、全国から問い合わせが相次ぐ。
 「秋は虫の音が聞こえて鹿が出ることもあるんです」。大阪府と兵庫県にまたがる妙見山(660メートル)で同10月、木漏れ日が斜面に区分けされた埋葬スペースを照らしていた。同社代表取締役小池友紀さん(40)は「ハイキングや森林浴など、憩いの時間を過ごしながら故人を思ってもらえれば」と話す。
 循環葬では、山中のテニスコート約10個分のスペースを区分けし、2ミリ程度に粉砕した遺骨を埋葬。墓標や墓石は立てず、山自体がお参りの対象になる。
 墓地埋葬法は墓の運営を宗教法人などに限定しており、同社は経営主体となる妙見山の寺院「能勢妙見山」から運営を委託されている。妙見山には氷河期から続くとされるブナ林があり、寺院が保全に取り組んできたが資金繰りが課題に。同社が循環葬の売り上げの一部を森林保護団体に寄付することで、環境保全に役立ててもらう狙いだ。植田観肇副住職(45)は循環葬を通じて「自然を守り育てる方法を確立したい」と期待を寄せる。
 同社へは同12月時点で全国から約250件の問い合わせがあり、10件の契約が決まった。夫の家系の墓に埋葬されることに違和感を持ち、最後の地を自分で選ぼうとする女性も多いという。小池さんは「既存の葬送に疑問を感じている人もいる。自然の輪に入る循環葬が新しい選択肢となれば」と話した。料金は生前の契約で「合葬」は48万円、「個別葬」は77万円など。