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<伊良波冴子さんを悼む>演じる役 輝かせる天才


<伊良波冴子さんを悼む>演じる役 輝かせる天才 父・伊良波尹吉の名作歌劇「奥山の牡丹」で、生き別れた息子と再会する主人公を演じる冴子さん(左)=2016年、那覇市民会館
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 父・伊良波晃の妹。叔母の冴子とは物心ついた時から一緒に暮らしていた。第二の母親のような存在。中学の時に父が他界してからは叔母が沖縄芝居役者として育ててくれた。

 祖父の伊良波尹吉と叔母は琉球歌劇役者として評価されてきた。叔母は「歌劇を守って伝えていかないといけない」と口酸っぱく言い、生きざまや行動でも示してくれた。歌を基礎の基礎のレベルから教えてくれた。そんな中で育ってきたからか歌劇が一番好きだ。

 叔母は、演じる役をきらめかせるのが天才的だった。叔母が演じた役を、演じることがあるが、演じて初めて出番の少なさに気づく。短い登場時間でもその役を輝かせていたんだと気づく。

 叔母は乙姫劇団で女性役の演技を学んだ。乙女の役を演じる時は生活感が出ないよう、やぼったくならないようにと教えられた。80歳頃まで舞台に立っていた。芝居にささげた人生だったと思う。かれんに生き抜いた偉大な人だ。

 習いたいことがまだいっぱいあった。習ってきたことを少しでも多く、後輩たちに伝えていきたい。

 (伊良波さゆき 沖縄芝居研究会代表、談)


 沖縄芝居役者の伊良波冴子さんは8月10日に死去、87歳。