沖縄小林流空手道・古武道連盟ワールド王修会会長の知念賢祐さんが他界した。頑健な体で言動も若く、性格は温厚で謙虚、自身の哲学を持っていた。沖縄、世界中の空手家を牽引(けんいん)する立派な武道家だっただけに残念でならない。
知念先生は50年近くフランスに在住し、イギリス、ドイツ、ポーランド、カナダなどでも沖縄の伝統空手道、古武道の神髄を普及してきた。その情熱は驚嘆に値する。頭の下がる行動力だ。
画才もあり、油絵や水彩画などで個展を開催し、好評を得ていた。武道、絵画とまさに「文武両道」で抜きんでた才能の持ち主だった。
私とは30年以上の付き合いで同い年。彼の小林流、私の剛柔流、そして上地流の下地康夫先生、上地哲先生の三流派で欧州セミナーを開催し、2004年には読谷村で「沖縄伝統空手道古武道国際研修センター」を設立した。
前に、なぜフランス行きを決めたか聞くと「みんなアメリカに行くので私はフランスにした」という意外な答えが返ってきた。現在もそうだが、軍人として沖縄に駐留した米国人が母国で道場を開き、沖縄の先生方を招いている。しかし今や空手は北米にとどまらず、世界中に普及している。あの時の答えは、冗談交じりなのか、将来を見据えたものだったか。今となっては知るよしもない。
展望や技術交流など話したいことはまだまだあった。心残りでならない。
(沖縄空手・古武道連盟会長)
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知念賢祐さんは9月30日に死去。80歳。