琉球の葛藤 熱演 沖縄俳優協会「首里城明け渡し」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
史劇「首里城明け渡し」で議論をぶつけ合う大和党の宜湾親方(玉木伸、右)と支那党の亀川親方(春洋一)=2日、那覇市民会館

 133年前の出来事だが、今も同じ構図が続く沖縄の現実を突き付けられた気がした。2日に那覇市民会館で上演された沖縄芝居の琉球史劇「首里城明け渡し」(作=山里永吉、演出=与座朝惟、演技指導=玉木伸)。1988年以来、約24年ぶりに上演された。

「琉球処分」が題材の大作を沖縄俳優協会が熱演した。
 那覇市文化協会の創立20周年を記念した特別公演。物語は、明治政府が琉球王国へ首里城明け渡しを迫る1879年が舞台。親日本派の大和党・宜湾親方(玉木伸)と親中国派の支那党・亀川親方(春洋一)が議論する場面から始まった。
 時勢の流れから日本に従わざるを得ないとする冷静な宜湾に対し、長年の恩義がある中国を頼るべきとして激しく怒る亀川のやりとりは当時の琉球の葛藤を想起させた。
 亀川は息子の真山戸(嘉陽田朝裕)、娘の婚約者・池城里之子(与座朝奎)の2人が大和党の宜湾親方へ賛同していることに怒る。決定した真山戸、池城の日本留学を取り消し、中国へ留学させようとする。真山戸は酒浸りになり、中国留学を拒否した池城は婚約を取り消される。若者が集う花染党は琉球独立の考え。松田を暗殺しようと図るが、あえなく退散させられる。世替わりに直面した琉球の若者も描いた。
 首里城内で処分官・松田道之(普久原明)が武力的威圧の下で廃藩置県を通達する場面は「琉球処分」の歴史を象徴。津波古親方(北村三郎)や三司官らが激しく反論するも、松田は首里城明け渡しを正式に言い渡す。津波古らはがっくりと肩を落とし、悔しさをこらえる。
 城を明け渡した尚泰王(与座朝惟)は松田とともに船で東京へ。船出前、涙を流す臣下らを前に、尚泰が複雑な心境を表現したつらねを唱える。「戦世(いくさゆ)ん終(し)まち 弥勒世(みるくゆ)んやがて 嘆(なじ)くなよ臣下 命(ぬち)どぅ宝(たから)」。平和を希求する言葉の象徴ともなった名せりふに会場は大きな拍手で沸いた。
 王妃(伊良波冴子)、津波古親方や大勢の臣下、腰元らに見守られる中、出航する尚泰。伊良波、北村らが泣き崩れながら見送る様子は涙を誘った。一部で、舞台裏の声がマイクを通して聞こえてしまった点などはもったいなかった。
 今回の公演は琉球が消滅し、日本へ組み込まれていく節目となった歴史を描く大作として沖縄芝居ファンのみならず、幅広く関心を呼んだ。新体制で再始動した沖縄俳優協会。今後も上演機会の少ない史劇を掘り起こし、上演する取り組みに期待したい。
(古堅一樹)