名作継承に期待と課題 北谷で現代劇「丘の一本松」


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頑固親父の渡久地の主(八木、右)へ反抗する息子の良助(高宮城、中央)と見守るアンマー(真栄田)=北谷町のちゃたんニライセンター

 沖縄芝居の劇団大伸座公演がこのほど、昼と夜の2回、北谷町のちゃたんニライセンターで行われた。北谷町自主文化事業実行委員会主催。

現代劇「丘の一本松」(大宜見小太郎作、北村三郎演出)と歌劇「新汀間物語」(上間正男作、北村演出)を上演した。90歳を過ぎても舞台に立ち続けた大宜見静子座長が亡くなって6日後の公演。名作の継承へ期待と課題を感じた。
 夜公演を取材した。「丘の一本松」は頑固な親父・渡久地小の主(すー)(八木政男)はいつまでも息子・良助(高宮城実人)を子ども扱い。主の妻アンマー(真栄田文子)が仲を取り持とうとするが、良助は家出する。主は連れ戻しに追い掛け、丘の一本松の下で息子への思いを語る。木の陰でこっそり聞いた良助は親の思いを知り、再会した2人は抱き合う。
 静子氏が長く演じたアンマー役を務めた真栄田は過剰すぎず自然体で演じた。主の頑固さと子を思う両面を八木がベテランの味で表現。高宮城も父へ反発する前半から、終盤には親の心を知るまでの変化をめりはりをつけて演じた。
 ただ、昨年も行われた同センターでの公演に比べ、見どころで舞台へ引き込む存在感は、やや物足りなく、客席との一体感がもっとほしいとも感じた。
 実の夫婦でもある大宜見小太郎、静子の両氏が息の合ったスー、アンマーの役を演じ人気を博した「丘の一本松」。千回以上も演じる中で深まってきた味わいを表現することは簡単ではないだろう。小太郎・静子夫妻が亡くなった今、舞台を重ねる中で名作の味わいが次代へ受け継がれていくことを期待したい。(古堅一樹)

※注:高宮城の「高」は旧漢字