戦場で描く人間らしさ 環バレエアートスタジオ


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つかの間の“クリスマス休戦”を楽しむ兵士たちを陽気に演じる出演者=9日、沖縄市民小劇場あしびなー

 環バレエアートスタジオ(比嘉環代表)の「ダンスインスピレーションVol.8」が9日、沖縄市民小劇場あしびなーであった。

第1次世界大戦の“クリスマス休戦”を描くマイケル・モーパーゴの絵本「世界で一番の贈りもの」を沖縄可否の会の平安玲子が朗読。比嘉環による創作バレエとコラボレーションした。
 英独両軍の兵士がクリスマスを機に“休戦”し、酒とソーセージを手に理解し合っていく。銃を向け合う緊迫した序盤と対照的に、解放感ある踊りを繰り広げる。兵士が家族への思いを語る場面は大城志奈子らが視線を遠くに投げ、ゆっくりと踊る。静かな音楽の中で、軍服の色は違っても家族を思う気持ちは同じだということを、調和の取れた踊りで表した。
 包帯を巻いた白装束の6人が青白い光を受けて踊る場面は、命を落とした者たちの無念さを体現するような不穏な舞を繰り広げた。
 兵士が妻に宛てて書いた休戦の様子を伝える手紙を見つけ、その妻に届ける少年を演じた平安を含め、出演者は独創的な振り付けと情感を込めた演技で、戦場で人間らしさを忘れなかった兵士たちの温かい物語に来場者を引き込んだ。