琉球文化、洋舞と溶け合う N・Sバレエ団


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悲嘆に暮れていた尚貴王(左、ビャンバ・バットボルト)を包み込むように舞うマナビ(長崎真湖)=16日、浦添市てだこ大ホール(金良孝矢撮影)

 N・Sバレエ団のクリスマス公演「2012End of Year Performance」(沖縄インターナショナルバレエコーポレーション主催、浦添市てだこホール、琉球新報社共催)が16日、浦添市てだこ大ホールで開かれた。

演出、構成、振り付けを務めた長崎佐世が「琉球バレエ組曲」を提唱して創作した「琉球歴史ロマン 天川の誓い」は、同バレエ団と国際的に活動するゲストダンサーや琉星太鼓、安田辰也ら多彩な出演者の共演と新垣雄による音楽が巧みに調和。琉球文化とバレエを融合した舞台で悲恋の物語を描き、沖縄発の新たな総合芸術を印象づけた。(20日付で特集)
 「天川の誓い」は百姓たちの踊りが琉球王国時代の活気に満ちた農村を描く。百姓娘で村一番の舞姫のマナビ(長崎真湖)に一目ぼれした貴龍(後の尚貴王=ビャンバ・バットボルト)。引かれ合う2人のパ・ド・ドゥは、初恋に目覚めた少年と少女のようにはつらつと踊る。貴龍が高々とマナビの体を掲げるリフトに拍手が湧き上がる。去った2人をそっとしておいてあげるよう諭すおばあ(高宮城実人)のコミカルなさまは会場の笑いを誘う。
 許嫁(いいなずけ)との結婚をほごにされた母君(長崎佐世)が下臣を差し向ける場面は、低音を強調した音楽とゆったりした舞で憂いと憤りを表す。兵の頭領(バットムンフ・チンゾリク)らのアクロバティックな舞が繰り広げられ、2人は捕らえられる。
 貴龍と許婚のシトリ(島袋志保)との結婚式はかぎやで風をモチーフにした華やかな舞、勇壮なチョンダラーも踊る。会場にいたマナビに気付いた貴龍は喜ぶが、マナビは激高したシトリに刺されて命を落とす。
 思い悩む尚貴王(貴龍)はマナビと出会った農村までさまよい歩き、刀を取って自殺を試みる。バットボルトの抑制された演技は悲嘆に暮れる心情を陰影深く映し出す。どこからか現れたマナビの優しい舞が尚貴王の悲しみを包み込む。胸にこぶしを当て、前を見据える尚貴王の力強いまなざしは高い志と希望を感じさせ、来場者の拍手とともに幕が下りた。
 第1部で上演された「クララの夢」(「くるみ割り人形」より)は雪の精たちが雪の舞う姿や結晶、風の流れなどをスケール感のある群舞で描いた。高平望友(クララ)や玉城七星(金平糖の精)らの舞姿にひときわ大きな拍手が送られた。(宮城隆尋)