自在な旋律重ね合う 魅惑の弦楽器~ヴィオラ~


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ビオラを中心に、中低音楽器によるアンサンブルでバッハ「ブランデンブルグ協奏曲」を演奏する出演者=7日、那覇市のパレット市民劇場

 弦楽器ビオラに焦点を当てた演奏会「Viola Essence 魅惑の弦楽器~ヴィオラ~」が7日、那覇市のパレット市民劇場であった。新垣伊津子、片倉多恵、佐渡山安哉、比嘉佐和子がビオラを演奏した。

ゲストとして国内外で活躍するビオラ奏者の菅沼準二も出演。二重奏から五重奏までを巧みに奏で、歌うように自在な旋律を重ね合った。プロデュースした新垣伊津子(ビオラ奏者)が「沖縄初」と言う、ビオラを主役に据えた室内楽コンサート。通常のコンサートでは脇役に徹するビオラによる、表現の幅を探求する多彩な演奏に来場者を引き込んだ。
 ビオラはバイオリンとほぼ同じ構造で一回り大きく厚みがあり、低い音を出せるため合奏や重奏で中音域を担う。近代以降は独奏曲も多く作られているが、他の楽器に比べると焦点を当てられることは少ない。
 演奏会はヴラニツキーの五重奏曲「カッサシオン」(ヘ長調)で幕開け。ベートーベンの三重奏曲(作品87)なども次々と奏でた。ボーエン「幻想四重奏曲」は新垣、片倉、比嘉、菅沼が多様性に富んだビオラの音色を引き出し、幻想的な旋律に聞き手を酔わせる。
 シュターミッツの二重奏曲(ハ長調)は古典的な華やかさと愛らしさを持った曲想を、菅沼、新垣の師弟が息のあった掛け合いで描いた。ヴァインツィールの四重奏曲「夜曲」(作品34)は高音域で奏でるロマンチックな旋律が印象的。滑らかに運ぶ4つのビオラの音が調和し、ゆっくりと余韻を残して消え入る。
 バッハ「ブランデンブルグ協奏曲第6番」(変ロ長調作品1051)は高音楽器を含まず、中低音楽器によるアンサンブル。ビオラを新垣、菅沼、チェロを庭野隆之、城間恵、具志堅真紀、コントラバスを国吉和美、チェンバロを宮城理恵子が演奏した。第1楽章は優雅で心躍る旋律で導入し、チェロやコントラバスの低音の響きが印象的な落ち着いた第2楽章に続く。第3楽章はビオラの旋律を随所で鮮やかに描き、来場者の喝采(かっさい)を浴びた。(宮城隆尋)