遊び心と独創性 大度室内楽団


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プロコフィエフの独創的な曲をはじめ多彩な演奏で来場者を魅了した大度室内楽団=4月28日、南城市文化センター・シュガーホール

 前衛的な曲想を巧みに奏で、室内楽の魅力を伝えた。大度室内楽団(岩田友希江代表)の第6回定期演奏会(音楽監督、指揮・田代詞生)が4月28日、南城市文化センター・シュガーホールであった。

難曲とされ、沖縄をはじめ地方での演奏会で披露されることの少ないロシアの作曲家S・プロコフィエフの作品を中心に演奏。超絶的な技巧を要するバイオリンとフルートの演奏をはじめ、奇妙にも思える独創的な曲想で来場者を魅了した。
 幕開けはモーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」序曲。歌劇に登場する人物の数と同じ数の音型を管楽器がつないでいくなど、遊び心のある演奏で来場者を引き込む。
 悲壮感が異彩を放つモーツァルトのピアノ協奏曲第24番(ハ短調)は、遠藤志葉(ゆきよ)のピアノ独奏が管弦楽を引っ張る。物々しく始まる第1楽章から、旋律にさまざまな感情を映し出す。穏やかで憂いのある第2楽章を経て、遠藤の劇的で鬼気迫る演奏で締めくくる。
 プロコフィエフのヘブライの主題による序曲(ハ短調・作品34)は弦楽四重奏とクラリネット、ピアノという特徴的な編成。クラリネットによるヘブライの旋律は奇妙にも聞こえるが心地よくもあり、バイオリンとビオラが掛け合う第2主題も印象的に奏でた。
 プロコフィエフの交響曲第1番「古典」(ニ長調作品25)は優雅で古典調、ハイドンの作品を連想させる導入から、第1主題の直後にハ長調に転調するなど前衛的な曲想が随所に表れ、聴衆をあきさせない。
 高音から低音に降りていくバイオリンの透明感ある旋律が印象的な第2楽章、古風なガボット形式の第3楽章の後、軽快な主題が次々に繰り出される活気に満ちた第4楽章で、華やかに駆け抜けて終わる。心地よい調和で会場を包み、客席の母に抱かれた赤ん坊もじっと演奏に聞き入っていた。(宮城隆尋)