鉄軌道導入 単年度黒字は可能 年度内に構想策定へ


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 県の鉄軌道導入調査が本格化している。6日公表した2012年度調査では那覇空港―名護間のモデルルートを設定し、省コスト型のリニアモーター式小型鉄道(最大時速100キロ)利用を仮定し、事業化の可能性を探った。国の調査では累積赤字が膨らむとの厳しい結果が示されていたが、開業初年度から単年度黒字化は可能としている。

 鉄軌道は構想から完成まで15~20年程度かかると言われる。県は本年度中に基本構想をまとめ、関係自治体や識者からの意見聴取を経て、15年度末にも国に事業化を働き掛ける。
 県調査では空港―名護間の市街地や観光拠点などの13拠点を最短で結んだモデルルートを仮設定。リニア小型鉄道を利用した総延長69キロの路線で、空港からうるま市までは用地確保が困難なため、地下鉄区間と想定。全路線の7割がトンネル構造で、総整備費は5600億円と試算した。
 観光客を含めた1日当たり利用人数は3・2~4・3万人と想定。バスなど既存の公共交通利用者に加え、鉄道導入による北部地域の利用者増のほか、米軍普天間飛行場の返還に伴う需要増なども見込んだ。
 運賃は那覇―名護で1250円、那覇―沖縄で360円と、ゆいレールやJR九州の水準に合わせて設定したが、産業振興などの観点から上限を500~千円に抑える政策的運賃の導入も視野に入れる。
 線路や駅などインフラ部分の大半は国費で整備し、運行を民間が担う「公設民営型・上下分離」方式を適用すれば、単年度黒字化は可能と結論付けた。
 ただ県交通政策課は「あくまでも採算性を検討するための調査で、実際の路線計画などはこれから」と説明する。
 一方、内閣府の11年度調査は糸満―名護間を普通鉄道で整備した場合の事業費は7300億~1兆600億円と試算。「上下一体」の第三セクターの運営で毎年150億円、開業40年後には累積赤字が6千億円に達すると報告している。
 県の報告は国側に反論した形となっているが、実現化の方法を重視する「戦略調査」と位置付けたことで結論に差が出た形だ。
(慶田城七瀬)

県の事業性検討のためのモデルルート図
県と国の鉄軌道調査の比較表(クリックで拡大)