浦添総合病院、産科を来月末に廃止 医師不足で維持困難


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 浦添市の浦添総合病院(棚田文雄院長)は9日、10月末をもって出産を含む産科診療を廃止すると発表した。同病院は常勤産婦人科医の退職に伴い、残る常勤医が1人になるため産科の診療体制維持が困難になったと説明した。

県の医療政策を担う福祉保健部は、産科廃止の背景には全国的な産科医師不足があると指摘し、同様の問題が他医療機関で発生しないか危機感を強めている。同病院の充実した助産外来を目当てに遠くから通院する人も多かっただけに、廃止を残念がる声も上がっている。
 浦添総合病院は継続に向けて医師確保に取り組んできたが「新生児の異常に対応できる小児科が備わっていないため、琉球大学などからの医師確保が難しい。年度の途中で新たに医師を採用できない」と話した。一方で「近隣に県立南部医療センターや琉大付属病院といった困難な事例に対応できる大規模施設がある」と、廃止に踏み切った背景を話した。
 出産予定日が10月末までの妊婦に対しては、約50人を上限に診療を行う。予定日が11月以降の妊婦や、10月以前でも上限診療数に達した後の妊婦に対しては、他の医療機関を紹介する。同病院で今後出産予定の妊婦数は128人。昨年度1年間の出産件数は302人だった。
 浦添総合病院はこれまで、常勤医2人の他に大学から当直医支援を受けて診療を続けてきた経緯がある。今後については、産科を廃止したものの、態勢が整えば再開したい意向を示した。一方、婦人科診療に関しては来年4月まで継続するが、それ以降は未定。
 浦添総合病院の産科廃止について日本産婦人科医会県支部の高良光雄前会長は「周辺の診療所は中等度のリスクのある人を含め患者数の増加が予想される。診療所の負担は増える」と話す。県福祉保健部は同病院にはリスクの高い母児を受け入れるNICU(新生児集中治療室)がなく、立地する南部医療圏内は、産科を掲げる医療機関数が多いため「影響は少ない」とみる。