環境省「重要海域」選定 県内は辺野古沖含む18カ所


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水深わずか3~5メートルほどの海底に、色とりどりに広がるサンゴ=4月29日、名護市大浦湾(金良孝矢撮影)

 【東京】環境省の有識者会議は9日までに、海の生物の多様性を守るため、日本の排他的経済水域(EEZ)内で「重要海域」を初めて選定した。県内からは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定されているジュゴンの生息地で、米軍普天間飛行場の移設予定地、名護市辺野古沖を含む沿岸域18カ所が選ばれた。

2010年に名古屋市で合意した生物多様性条約の「愛知目標」は、「20年までに少なくとも海域の10%を保護区などとして保全する」と掲げており、環境省は海洋保護区拡大を視野に入れる。具体的な区域確定や特徴などを整理した後、今夏に公表する。
 重要海域は、領海で水深が200メートルより浅い場所を「沿岸域」、そのほかを「沖合表層」「沖合海底」に分類。(1)固有種が分布(2)絶滅危惧種が生息(3)生態系の多様性(4)日本を代表する生態系がある-などの8項目を基準に評価した。「沿岸域」は約280カ所、「沖合」は「表層」と「海底」合わせて約50カ所が選ばれた。
 選ばれた県内の沿岸域18カ所のうち本島沿岸域は6カ所。環境省は海域の詳細を明らかにしていないが、関係者によると、本島を囲む沿岸域のほぼ全域が選定された。絶滅危惧種のトカゲハゼなどが生息する泡瀬干潟や海草クビレミドロがいる那覇空港第2滑走路建設予定地も含まれる。
 新たな基地の建設予定区域は県が策定した「自然環境の保全に関する指針」で、「自然環境の厳正な保護を図る区域」であるランク1と評価されている。あらためて生物学・生態学の観点から保全が必要な海域として示された形だ。
 環境省は「漁業や開発などの規制に直ちに結び付くものではない」とし、法的拘束力はないと説明。「社会、経済、文化的な重要性は考慮せず、科学的に重要な場所を示した。将来、保護区を設定する際の基礎資料になる」としている。
 全国ではアカウミガメ産卵地を含む御前崎・遠州灘沿岸(静岡、愛知両県)や、ホタルイカの群れが見られる七尾湾・富山湾南部(石川、富山両県)などが選ばれた。