同じ台本で異なる舞台 わが街の小劇場


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 わが街の小劇場の第6弾プロデュース公演「エデンの園」(大村正泰作)が、4月29日から5月6日まで那覇市の同劇場であった。劇団コヨーテピストルの役者と演出として活動してきた福永武史とパク・ファナムが、日時を変えて演出する「ダブル演出・ダブルキャスト」で上演した。

同じ台本から全く異なる舞台ができるという、演劇の醍醐味(だいごみ)を示した。
 パクの演出では「百年を、巡る、二人」をテーマに当山彰一と幸地尚子が演じた。最初はマッチ売りの少女と紳士のような衣装で登場し、時代が進むにつれ着替えていく。音楽もクラシックからジャズ、ピンク・レディーと激しく変遷。せりふの間に無声の演技と音楽を大胆に挿入し、新たな物語を生み出した。
 福永の演出では男女2人という前提すら取っ払い、5人を起用した。前半は小浜敬子と前堂篤輝が事故を起こした若いカップルを演じる。後半は祷利博と上門みきがすれ違う夫婦を、山内千草が赤ちゃんを演じた。最後は2組が交差し「ハッピーエンド」(福永)になるが、力のこもった演技はむしろ鬼気迫るものを感じる。斬新な演出だが、分かりにくい部分やせりふが聞き取りにくい時もあった。
 福永らは2011年にこの劇場を開設して以来、県内女優陣の活性化を狙った「女優」などユニークな公演を企画し続けている。ライブ感あふれる演劇が見られる場として、今後も意欲的な公演を期待したい。(伊佐尚記)

福永武史の演出で演じる(左から)前堂篤輝、山内千草、小浜敬子、祷利博、上門みき=5日、那覇市のわが街の小劇場
パク・ファナムの演出で演じる幸地尚子(手前)と当山彰一=6日、同劇場