漁船はえ縄切断 米軍、関与言及せず


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米海軍の音響測定鑑「インペッカブル」(左)に接近する近海鮪漁協所属の漁船=5月21日、沖縄本島から南西約110キロの海域(県近海鮪漁協提供)

 県内のマグロ漁船7隻のはえ縄が本島近海で相次いで切断され、米海軍の音響測定艦「インペッカブル」の関与が疑われている問題で、米海軍は9日、本紙の取材に対し「漁業者がインペッカブルの運用による漁具の損害を訴えていることは把握している」と回答した。

はえ縄切断にインペッカブルが関与したかについては言及を避けた。その上で現場海域が日本の領海でないことを理由に「日米地位協定に関わる事案ではない。米艦船の運用によって被害を受けたと考える者は誰でも海軍法務部を通して米政府に被害を訴えることができる」と述べ、米海事法および米連邦規則に基づいて解決すべきだとの見解を示した。
 本紙は漁具の切断事案が発覚した5月23日に在日米軍や米海軍に対して事実関係を問い合わせていたが、回答はなかった。6月9日に被害関係者が撮影したインペッカブルの画像を電子メールに添付して再度質問したところ、同日、米海軍から事案自体は把握しているとの回答があった。
 一方、はえ縄切断の被害を最も多く受けた県近海鮪(まぐろ)漁協は9日、現場海域にいた漁船から撮影したインペッカブルの映像を沖縄防衛局に提供。早期の全容解明を求めた。同漁協によると、同日現在も防衛局から事実関係についての回答はない。我如古清組合長は「事故から2週間経過した今も防衛局から回答がない。米艦艇がはえ縄を切断した事実を早急に突き止めてほしい」と語った。
 一方、近海鮪漁協と県漁連、県水産課の担当者は3日に外務省沖縄事務所を訪ね、現場海域を航行するインペッカブルの写真を提出しようとしたが、同事務所は「現場海域が公海上で地位協定上、何もできない」とし、受け取りを断ったという。(松堂秀樹、吉田健一)

◆当事者間で話し合いを/水産庁
 マグロはえ縄漁船のはえ縄が本島近海で相次いで切断され、米海軍艦艇の関与が疑われている問題で、水産庁漁業調整課は9日、「当事者同士が判明していれば民事事案なので、当事者間で話すことになっており、水産庁として関わることはない」と話した。
 さらに「仮に米海軍艦艇がはえ縄を切断したと判明した場合でも補償などについては双方で話し合って決めるべきものだ」とした。
英文へ→U.S. Navy deflects call for explanation about damages to tuna fishing boats