往時の豊かな調べ 御座楽と明清楽


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県内外の三団体が一堂に会し、共演した「御座楽と明清楽」=5月31日、浦添市てだこホール

 琉球宮廷音楽の演奏会「御座楽(うざがく)と明清楽」が5月31日、浦添市てだこホールであった。15世紀ごろに琉球王朝に伝わった音楽「御座楽」と中国の明代、清代に日本に伝わった音楽「明清楽」の豊かな調べを、訪れた人は満喫するとともに、当時の人々に愛された音階を回想した。

県文化振興会の文化活動支援助成事業。
 1879年の廃藩置県後、演奏の場を失い、“幻の宮廷楽”と呼ばれる「御座楽」は御座楽復元演奏研究会が演奏した。
 明楽は中国南方から江戸時代中期に福建省などから日本に渡ってきた。唐代、宋代の詩を歌詞とした音楽が中心となっている。一方、清楽は長崎県の出島に出入りする中国商人によって、江戸時代後期にもたらされたと言われている。
 「明清楽」は当初、明楽と清楽に分かれていたが、明楽が清楽に吸収される形で明清楽と呼ばれるようになった。今回、東京都の明清楽惠月社が明楽と清楽を、長崎県で活動する清楽の調(しらべ)が清楽を披露した。
 幕開けは御座楽復元演奏研究会による「賀聖明」。三絃(さんしん)や四胡、笛など、高く清らかな音色が会場中に響き渡る。江戸上りの際にも演奏され、中国皇帝と中山王を褒めたたえる歌の「太平歌」では厳かながらも豪華な雰囲気を感じさせる。
 続く第2部では、明清楽惠月社、清楽の調が出演する。「関雎」では、月琴などの音色に合わせ、伸びやかな歌声を響かせる。「九連環」は乾いた片鼓の音色とテンポの速い曲が特徴。曲によって、月琴と琵琶を持ち替えるなど、見る人を飽きさせない。楽器の音色に合わせた歌声も彩りを添えていく。
 第3部では、かぎやで風、四つ竹を玉城流いずみ会が御座楽の音色に合わせて踊った。
 第4部では、3団体が一堂に会して共演する。今も中国全土で愛されている「茉莉花」に加え、「紗窓外」を演奏した。総勢約30人が一つの舞台で奏でる様子は圧巻。御座楽と明清楽の出合いでは、低音から高音まで、それぞれの特徴を生かした音色が組み合わさり、会場を包み込む。終演後は、いつまでも拍手が鳴りやまなかった。(大城徹郎)