日常の大切さ伝える O.Z.E.「一瞬」


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一晴の妻(右端・幸地尚子)に一晴の最期の様子を語る安藤(右から2人目・新垣晋也)=1日、那覇市のテンブスホール

 劇団O.Z.E(頭(かしら)・真栄平仁)の演劇「一瞬」が5月31日と6月1日、那覇市のテンブスホールであった。作・演出は永田健作。2005年のJR福知山線脱線事故が題材。事故を記憶に刻むとともに、家族や友人がそばにいる一瞬一瞬の大切さを伝えた。

 妻(幸地尚子・山内千草)とぎくしゃくする一晴(山里三七樹)、母(平良直子)とすれ違う藍美(新地涼夏)、恋人(豊里友児)と暮らす静(又吉裕子)の犠牲者3人を軸に展開する。一晴と藍美は家族に「行ってきます」も言えないまま亡くなる。
 生き残って自分を責める安藤(新垣晋也)など事故を象徴する人物が登場。実際に関わった刑事が証言する音声も流し、生々しく伝えた。後半は事故が風化していく現状と忘れられない当事者を対比させた。観客自身も忘却しつつあったことに気付かされる。
 最後は野島友和バレエスタジオが天国を思わせる舞踊で締めくくった。永田は「現場で感じた犠牲者の無念さを表現したかった。言葉だけでなく身体表現で伝えられるものがある」と話す。重い芝居のアクセントになったが、最後までせりふ劇を貫いてほしい気もした。(伊佐尚記)