目くるめく魅惑の連弾 新崎誠実・洋実姉妹


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デュオリサイタルを披露した、ピアニストの新崎誠実(手前)、洋実姉妹=17日、南城市文化センター・シュガーホール

 ピアニストの新崎誠実(なるみ)、洋実(ひろみ)姉妹によるピアノ・デュエットリサイタル(同実行委員会主催)が17日、南城市文化センター・シュガーホールであった。

88鍵の鍵盤を使い、幼少時代から慣れ親しんだ曲なども披露。長年ともに過ごした姉妹ならではの息の合った連弾に、観客からはため息が漏れた。
 誠実が「2台のピアノに分かれて弾くのは『手をつないで歩く』ような感覚。1台のピアノで2人で弾く連弾は『二人三脚』のイメージ。相手の呼吸を読みながら、ともに音を奏でていくのが連弾の魅力」と違いを説明。高音部分を担当する「プリモ」、低音部分を担当する「セコンド」が曲目によって入れ替わりながら、繊細な旋律を奏でていく。
 第1部は連弾のために作られた楽曲から披露。ビゼー「子どもの遊び」から3曲を弾き、あいさつ代わりに連弾の魅力を紹介する。6曲編成のフォーレ「ドリー」では、おとなしさと激しさが交互に顔を出す。「巧みなパート分けで書かれている」(誠実)と話すシューベルト「2つの性格的行進曲」は一音一音丁寧に紡ぎ、一体感を醸成する。
 第2部はオーケストラのために作られた楽曲を中心に演奏する。バッハ「目覚めよと呼ぶ声あり」は掛け合いのように弾く。全体としてゆったりと優しいイメージながら、徐々にテンポが速くなり、目まぐるしく印象の変わる1曲。二人の指が鍵盤上で、目にも止まらぬ速さで踊り、跳ねる。力強い音が観客を圧倒して、曲を締めくくる。一瞬の静寂の後に万雷の拍手がわき起こった。
 ローゼンブラット「2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ」では、二人羽織のように背中越しに演奏し、プリモ、セコンドが入れ替わるなど、見る人の目を飽きさせない。ラヴェル「スペイン狂詩曲」より「ハバネラ」「祭り」を披露する。高音が伸びやかな音を歌うとともに、低音の厚みのある音が重なっていく。
 洋実が「今後もソロだけでなく、デュオとして活動の幅を広げていきたい」とあいさつし、アンコールでは「安里屋ユンタ」を速いテンポにアレンジした曲を演奏した。リサイタルは成功のうちに幕を閉じ、新崎姉妹が新たなスタートを切った。(大城徹郎)