【糸満】糸満市在住の音楽家・杉本信夫さん(80)らが地域のお年寄りを訪ね、旧暦8月15日の糸満大綱引きで、かつて歌われていた「綱引き歌」を採譜する取り組みを進めている。8月19日までに80~90代の女性3人に聞き取りを実施した。杉本さんは「歌を復活させて地域の子どもたちに歌ってほしい」と語る。
聞き取りを始めたきっかけは、民謡歌手の上原修さん(45)=糸満市=が大切に持っていた1本のカセットテープ。約20年前に「歌の勉強をしなさい」と近所の女性にもらったものだ。テープには今は歌われていない綱引き歌が収録されていた。
上原さんは、杉本さんが地域の古謡を調査していることを知りテープを聴かせた。杉本さんは「今までどこかに残っているはずと思いながらなかなか出合えなかった。やっと聴くことができた」と感激した。
テープを基に、杉本さんらは地域のお年寄りへの聞き取り調査を実施。字糸満に住む金城幸子さん(96)は抜群の記憶力で、若い時にチヂン(太鼓)を打ちながら威勢良く歌った綱引き歌の一部を伝えた。
幸子さんは「鼓ぐゎぬ鳴りば 行き欲さやあしが クヌ ハイヤヨー 母恐るさぬ 行きやならん ソーンソンヤソンソン(鼓が鳴り出せば行きたいのだが、お母さんが恐ろしいので行くことはできないよ)」と生き生きと歌った。
同字の金城芳子さん(87)も1番から9番までの歌詞を伝えた。
杉本さんは現在、字糸満南区自治会の子どもたちと共に歌を復活させようと取り組んでいる。長らく伝承が途絶えていた歌が復活し、街に響き渡ることを願っている。(赤嶺玲子)