【うるま】開会中のイチハナリアートプロジェクト(うるま市観光協会主催)の会場に、8月30日の後期開幕から伊計島在住作家のアートが登場している。作者は伊計老人クラブ会長の吉岡強さん(72)。
60歳の還暦と同時に自ら工房を立ち上げたが、地域活動に専念したため「工房は中途半端になってしまった」という。島でのアート展に触発され「最後のチャンス」と、自作を旧伊計小中学校会場内の「おばあ喫茶」に展示。「見る人が少しでも幸せになってくれれば」と期待を込める。
岡山県出身の吉岡さんは、妻が伊計島出身だった縁で移り住み、30年以上になる。車で本島へ通勤を重ねたサラリーマン時代を卒業し、貝殻やサンゴでオブジェを制作する世界に余生をささげようとしたが、地域に請われ、自治会や老人クラブ活動に力を注いできた。
出展した作品は「沖縄のニライカナイ」がテーマ。海岸を散策し、収集した貝殻やサンゴの破片を重ね、人魚を思わせる構造物に仕上げた。作品が鎮座する三角柱の土台部分は6~8月の3カ月で制作。三面に「鳥は空を飛び、魚は水に住み、人は希望に生きる」をテーマにした図柄を彫り込んだ。
「もう目も見えなくなるし、歯もなくなるし、最後のチャンスだと思って作ったよ」と吉岡さん。「半世紀近くお世話になり、幸せをくれた伊計島への恩返しと、作品を見る人が幸せになってくれればいい」と話す。
イチハナリアートプロジェクトでの地域づくりについて吉岡さんは「皆さんの心が豊かに、幸せになる。美しい自然を背景に、アートで島を飾り続けてほしい」と話した。