琉球古典と融合の舞 N・Sバレエ団


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 N・Sバレエ団(長崎佐世代表)の「琉球を舞う」が4日、那覇市ぶんかてんぶす館であった。琉球古典音楽に合わせ、バレエの動きで舞う―。会場を埋めた観客は二つの異なる芸能の“融合”の場に立ち会い、出演者も違和感を抱かせない調和した舞いで魅了した。

 長崎が振り付け指導、演出、衣装を担当した。幕開けは「若獅子」。波の音が会場に響き、獅子の衣装に身を包んだ昂師吏功(たかしりく)が登場する。りりしい表情と、本物の獅子さながらに荒々しく毛を振るわせ、体いっぱいで回り、勇壮さを感じさせた。
 「鳩間節」は、長崎遥らがスポットライトが照らす中、観客の手拍子に合わせ、力強くも軽やかに舞う。「天川」では、長崎真湖、昂師で2羽の鳥が湖で戯れる様子を表現。真湖に翻弄(ほんろう)される昂師とこっけいなやり取りが繰り広げられると、訪れた観客から笑みがこぼれる。
 「舞術」では空手、ヌンチャク、棒術と舞台狭しと出演者がアクション映画さながらの躍動感あふれる舞いで観衆を魅了した。
 古典舞踊で唯一の打組踊「しゅんだう」は2人の美女と2人の醜女が交互に踊る。美女のみずみずしい手の動きとは対比的に醜女はコミカルな動きで好対照を演出する。
 最後の演目、組踊「女物狂」から「再会」では、「天川」で見せた、躍動的な動きとは真逆の、子どもを連れ去られ、絶望する母親を熱演する。玉城太陽が演じる、子どもとの再会のシーンでは、感動をかみしめるように抱き寄せる。演技力の幅の広さに観客は目を見張った。
 最後は出演者全員でカチャーシーや三板を鳴らし、公演の成功を祝うように舞台で躍動。昂師が舞台の中心で連続回転を披露すると、一番の指笛や拍手が湧き起こる。
 大胆な解釈、アレンジを加えながら、土台となる物語は守るといった、古典への敬意を忘れない舞台。バレエの新たな可能性を感じさせる公演となった。(大城徹郎)

幕開けの「若獅子」で勇壮な獅子を演じる昂師吏功(中央)ら=4日、那覇市ぶんかてんぶす館
長崎真湖(手前)と昂師のこっけいなやり取りが笑いを誘った「天川」