きょう敬老の日 パッチワークの“達人”93歳・新垣さん


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完成に1年を要した家系図のパッチワークを前に、ひ孫へ贈るケープを編む新垣俊子さん=5日、那覇市小禄

 ちくちく縫って、贈り物―。那覇市小禄に住む新垣俊子さん(93)=鏡水出身=は裁縫の達人だ。24年前に夫の善太郎さん=享年(76)=が亡くなった後、パッチワーク作りを本格的に始めた。以降、孫へのベッドカバーの贈り物、自身のトーカチ祝いでは「愛」の字を縫い込んだ作品200枚を配った。規則正しく緻密な縫い目には、愛情があふれている。

 数あるパッチワークの中でも自慢は、10年前に完成させた2・5メートル四方の“家系図”だ。1年ほどかけて子、孫、ひ孫の名前と生年月日を縫い、中央には新垣家の名が位置する。「これを(私の)ひつぎに掛けてと言っている。みんなに包まれている気がするでしょうね」。子ども6人、孫21人、ひ孫は24人の大家族。孫やひ孫の名前は「全部覚えている」。小学校時代の先生の名前も振り返り、当時の唱歌「那須(なす)の与一(よいち)」を歌い上げてくれた。
 夫の善太郎さんは土木建築業を営み、新垣家は“ゼンタロウヤー”として地域でも有名だ。「とっても働いた、私は。こんにゃくも作ってだいぶ売りましたよ。相当苦労してるよ」と人生を振り返る。「今は毎日楽しく生活しています」と笑い、嫁の多津子さん(71)を見やって語る。「お嫁さんのおかげで長生きできる」
 善太郎さんは俊子さんを「お母ちゃん」と呼んで大事にし、俊子さんをいつもそばに置きたがった。だからこそ趣味が花開いたのは、善太郎さんの没後となったそうだ。(石井恭子)