神様の指揮 呼応する音色 屋比久勲特別演奏会


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 「吹奏楽の神様」と呼ばれ、赴任した中学・高校で全日本吹奏楽コンクールに通算30回出場したことを記念する「屋比久勲特別演奏会」が14日、那覇市民会館大ホールであった。屋比久と教え子85人らが再会。屋比久の指揮に呼応し、教え子たちが一つ一つの音をかみしめるように演奏した。コンクール出場時の課題曲などを披露し、立ち見の客も出るほど満員の会場で、思い出を回想する演奏に酔いしれた。

 舞台に多くの演奏家が現れ、最後に屋比久が登場すると、ひときわ大きな拍手が湧き起こる。
 原田学園鹿児島情報高校時、全国大会通算30回出場を達成した課題曲の「ライジング・サン」。時折静かに、そしてしなやかに指先を動かし、教え子たちを導いていく。その後も沖縄が日本復帰した1972年、真和志中時代に取り上げた「明日に向かって」といった、屋比久のこれまでの足跡、功績をたどるような楽曲が続いていく。
 石田中時代の課題曲「メインストリートで」は全体を通して伸びやかで雄大な1曲。中盤は軽快なテンポも顔を出し、メリハリを見せる。曲の合間に、県吹奏楽連盟顧問の名渡山愛文らも登壇し、固い握手を交わす。屋比久との思い出を語ると演奏中とは一転して、柔和な表情が会場を和ませた。
 赴任先でも多く演奏された曲「若人の心」はコントラバスの重厚な音色とゆったりとした印象的な曲。「西部の人たち」も終盤に向かうにつれ、迫力を増していく音色が会場を包む。
 県内の女声合唱団を指導し、声楽家の島袋節子、屋比久の教え子で声楽家の平山留美子も登場し、屋比久が指揮する演奏で「涙そうそう」「芭蕉布」を伸びやかな声で歌い上げた。
 締めくくりは“屋比久のサウンド指導の基礎”とされる「エルザの大聖堂への行列」。序盤のクラリネット、オーボエなど木管楽器の優しい音色から始まり、終盤に向かい、全ての楽器が畳み掛けるように音を重ねていく。演奏会の終了を名残惜しむように、会場中が惜しみない拍手に包まれた。
(大城徹郎)

再会を懐かしむように教え子の演奏を指揮する屋比久勲=14日、那覇市民会館大ホール
全日本吹奏楽コンクールの課題曲などが演奏された「屋比久勲特別演奏会」