80年ぶり「沢岻アマウェーダ」 独特の響き、豊作願う


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地元有志によって約80年ぶりに再現された沢岻のアマウェーダ=14日、沢岻公民館

 【浦添】浦添市の沢岻自治会の敬老会が行われた14日、米の豊作を祈願する古謡「沢岻のアマウェーダ(天親田)」が地元有志によって再現された。沖縄戦までに途絶えてしまった習俗で、約80年ぶりの復活となった。地域のお年寄りの記憶をたどって再現された音色は独特の響きを持ち、厳かな空気に包まれた。

 天親田の再現を目指す「沢岻アマウェーダ同好会」(会長・嘉数正雄自治会長)が組織されたのは6月。結成を呼び掛けた事務局長の国吉清さんは「古謡を再現できれば祖先がこの地でどう生きたのかを感じ、住民に地域への誇りが生まれる」と情熱を傾けてきた。
 かつて天親田は沖縄の村々で歌われており、おもろさうし(初版1531年)が編集されるより前から存在していたと言われるほど古い。2011年にてだこ市民大学に通っていた国吉さんは、沢岻にもあった天親田の存在を知り、卒論の題材として歴史を調べた。
 沢岻の天親田は、オモロ継承などで知られる音楽家の山内盛彬(1890~1986年)らの研究で歌詞が伝わっている。泉を探すところから始まり、耕作や種まき、刈り取りといった稲作の過程をたどる39句。かつては沢岻の各世帯の戸主がムラヤーに集まって歌っていたという。
 山内はメロディーを採譜したというが、楽譜は沖縄戦で焼失し音源は残っていない。国吉さんは「歌える人はいなくなっても、祖父や父親が歌うのを聴いたという人はまだいる。今やらなければ完全に途絶える」と復活の思いに駆られた。
 沢岻の天親田を直接聞いたことがある人の記憶から曲想を作り上げた。南城市玉城字仲村渠に伝わる天親田も聴いてもらい、「華やか過ぎて印象が違う」などの指摘を反映してより原形に近づけようとこだわってきた。
 再現の日、バサージン(芭蕉布の着物)に身を包んだ13人で舞台に上がり、歌声を響かせた。国吉さんは「生活様式の変化で失われた文化も多いが、天親田には絆を大切にする思想がある。足元を掘り起こすことは地域を活性化させる意義がある」と語った。