義理と純真さ表現 3期生ら みずみずしく「未生の縁」


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結婚を喜ぶ鶴千代(左端、川満俊祐)と乙鶴(左から2人目、金城真次)=9月27日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわの組踊公演「未生の縁」が9月27日、浦添市の同劇場で開催された。「未生の縁」は1988年、「月の豊多」などと共に石垣市で台本が見つかり、舞台となっている豊見城市を中心に上演されてきた。

同劇場の主催公演としては今回が初上演。3月に修了した同劇場の第3期組踊研修生が起用され、中堅・ベテランに支えられながらみずみずしく演じた。
 石垣市在住の芸能研究者・大田静男氏の情報提供を受け、芸能研究者の當間一郎氏が台本を発見した。當間氏は田里朝直の作と考察している。復活上演の第1回は97年。
 今回は当時と同じく島袋光晴が立方を指導した。地謡指導は首里良三。
 平良按司(宇座仁一)と保栄茂按司(平田智之)は男児と女児が生まれたら結婚させる約束をする。平良家には鶴千代(川満俊祐)、保栄茂家には玉の乙鶴(金城真次)が誕生する。だが鶴千代は継母(ままはは)(真境名律弘)に毒を盛られ失明する。平良按司は継母の口車に乗せられ、保栄茂家に迷惑を掛けまいと洞窟に鶴千代を捨てる。乙鶴は観音のお告げを聞いて鶴千代を救い出し、結婚する。
 組踊の舞台に登場する按司は1人であることが多い。冒頭、2人の按司が並ぶ光景が新鮮だ。盲目の鶴千代が家臣につかまったり、つえを使ったりする演技も珍しい。3期生の川満は盲目のときは憂いを帯びた演技、回復後は生き生きとした演技でめりはりをつけた。金城は乙鶴の純真さ、生まれる前に決められた縁組を守る義理堅さを表現した。
 鶴千代を洞窟に捨てる場面は家臣(儀保政彦、玉城匠)が苦渋の表情を見せ、「手水の縁」を想起させる。地謡の「東江節」も相まって胸に迫った。
 歌三線は與那覇徹と3期生の國吉啓介、仲尾勝成。與那覇は組踊の歌三線としては初舞台だったが、息の合った演奏を聞かせた。箏は赤嶺和子、笛は中村昌成、胡弓は又吉真也、太鼓は宮雄二。その他の立方は海勢頭あける、岸本隼人、天願雄一、田口博章ら。
(伊佐尚記)