「沖縄芝居 文化守って」 映画監督らがトークショー


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沖縄芝居の舞台美術を語る(左から)山城知佳子監督、砂川敦志監督、新城喜一さん、新城栄徳さん、瀬名波孝子さん、真久田巧さん=18日、那覇市の県立博物館・美術館

 沖縄芝居の舞台美術を一人で担う新城栄徳さんを取材したドキュメンタリー映画「うちなー芝居 舞台の美術」パイロット版(砂川敦志、山城知佳子監督)の上映会やトークショーが18日、那覇市の県立博物館・美術館で開催された。主催は文化の杜(もり)共同企業体。トークショーで登壇者は舞台美術の後継者がいない現状に触れ、「沖縄芝居の文化を守って」と呼び掛けた。

 栄徳さんと兄喜一さんは1960~70年代にあった沖縄芝居の専門劇場「沖映演劇」で舞台美術を担当し、芝居の黄金期を支えた。現在、喜一さんは引退し、栄徳さんが背景幕など各劇団の美術を一人で担う。
 映画は関係者の証言や栄徳さんの仕事風景、作品などを撮影している。
 トークショーには新城兄弟と両監督、役者の瀬名波孝子さん、真久田巧沖縄タイムス文化事業局次長が登壇した。
 山城、砂川両監督はことし、実演家親子が組踊を継承する姿を描いた映画「うんじゅぬ花道」を発表した。伝統芸能を取材する中で栄徳さんを知り、「応援できることがないか」(砂川)と今回の映画を作った。
 山城監督は「8畳ほどの小さいスペースで国立劇場おきなわの舞台に広げるような大きな幕を書くスキル、そして沖縄の空間、時間を表現しているのに驚いた」と話した。
 栄徳さんは喜一さんの作品を手本に学んだという。日舞やオペラの美術も経験したが、「沖縄(芝居)は暖かさを表現するために色をはっきりさせる。沖縄には沖縄の色があり、知恵を尽くして色をつくる」と語った。「沖縄芝居の文化を守っていけるかは大きな問題だ。後輩を育成できるよう力添えをお願いしたい」と呼び掛けた。
 沖映で喜一さんは美術だけでなく、舞台装置にも関わった。屋上に水タンクを設置し、舞台に「津波くらいの水が流れる」仕掛けを作って観客を驚かせたことなどを紹介した。「沖映はお金を掛けた舞台装置が目玉になった。北はやんばる、南は糸満から見に来る人もいた」と振り返った。
 喜一さんと40年ほど親交のある瀬名波さんは「舞台と役者は一体にならないといけない。立体感のある立派な背景幕だと自分たちも燃える。きれいな舞台でやってきたことを誇りに思う」とほほ笑んだ。
 イベントでは芝居「愛の雨傘」も上演された。