障がい者 日中連携を 沖国大でシンポ、中国の実情紹介


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東アジアの「障害学」の連携に向け、中国の事例を発表したフ・ガオシャンさん(右)=18日、宜野湾市の沖縄国際大学

 障がいを社会や文化の視点で捉え、逆に障がいを切り口に社会や文化の在り方を考える「障害学」の東アジアでの連携に向けたセミナーとシンポジウムが18日、宜野湾市の沖縄国際大学で開かれた。

50人余が訪れた。「中国の障害学から学ぶ」(沖縄国際大学南島文化研究所主催)とシンポジウム「東アジアの障害学のネットワークに向けて」(障害者の権利条約の実施過程研究会、エンパワメント沖縄、障害学会沖縄大会実行委員会主催)で、中国の障がい者権利運動の実情を聞き、国境を超えた連携を模索した。
 11月8日に同大で開催される「第11回障害学会沖縄大会」の事前企画として実施された。進行には音声文字通訳と手話通訳がついた。
 セミナーに登壇した中国の障がい者団体「ワンプラスワン」のカイ・コンさんやフ・ガオシャンさんによれば、中国における当事者運動は1980年代以降ようやく動きだしたという。その中で障がい者の権利擁護という観念を打ち立て、新たな職域の確保を推進してきたのが同団体だ。コンさんは「過去40年間、障がい者の権利運動は政府に進められ、管理される歩みをたどってきた」と振り返るが、2008年の北京パラリンピック開催と相まって障がい者の権利意識は一定程度向上したという。
 08年、中国政府は国連の「障害者権利条約」を批准したが、条約履行義務の実施状況に対し「ワンプラスワン」は非政府組織としてのシャドーレポートを同国内で初めて国連に提出した。例として第10条「生命に対する権利」では、貧困や差別のために人身売買や誘拐の対象となり労働力として搾取される農村や貧困地域の障がい児について、強制労働も人身売買とみなして処罰対象とすることを提案した。一方でガオシャンさんは、政府との対立を招く結果にならないよう苦心して活動を進めている現状も語った。
 コンさんは「日本の障がい者福祉団体のレベルは高く、外国から見ても垂ぜんの的だ。日本の団体と連携して一緒に権利擁護に取り組んでいきたい」と話した。