舞台と客席 一体に 国立劇場が感謝デー


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 国立劇場おきなわの企画公演「ゆらてぃく遊ば」が25日、浦添市の同劇場で開催された。舞台と客席が一緒に楽しみ、距離を縮めようと企画された琉球芸能のファン感謝デー。遊び心あふれる沖縄芝居で楽しませた。休憩時間には芸能実演家が模擬店や記念撮影で観客と触れ合った。

 芝居は中堅、若手による喜劇「鶴亀二児其(つるかめにじそ)ノ後(ご)ノ噺(おはなし)」(嘉数道彦作・演出)を初演した。また重鎮舞踊家が歌劇「今帰仁祝女殿内(なちじんぬんどぅんち)」(上間昌成作、瀬名波孝子指導)で久々に演技を披露した。
 「鶴亀―」は組踊「二童敵討」の続きを描いたパロディーだ。あまをへ(高宮城実人)の三十三年忌に集まった供3人(花城英樹、佐辺良和、玉城匠)の前に、あまをへの霊が現れる。あまをへは自分を酔わせて討ち取った鶴松(宇座仁一)と亀千代(石川直也)に復讐(ふくしゅう)を試みるが、鶴松は酒乱の中年になっていた。
 あまをへが鶴松を酔わせたり、鶴松があまをへを法力で鎮めたりと、名場面のパロディーに笑いが絶えない。普段は地謡を務める花城の演技も客席を沸かせた。笑いの中に孤独や世の無常を描き、最後はめでたしとなる物語は嘉数らしい味がある。音楽は仲村逸夫、振り付けは阿嘉修。地謡は玉城和樹、喜納吏一、平良大、池間北斗、入嵩西諭、森田夏子、久志大樹。
 「今帰仁―」は若按司(谷田嘉子)と祝女殿内で働くカマド小(玉城節子)の恋を美しく、若按司のお供三良(金城美枝子)と祝女殿内で働くチラー小(玉城秀子)の恋をコミカルに描く。出演者はかつて組踊や芝居も経験した世代だ。三枚目も得意な美枝子やりりしい谷田など適材適所の配役が生きた。祝女アンマー役のベテラン役者・瀬名波も支えた。地謡は玉城正治ら。
 休憩中は実演家との記念撮影に長い列ができた。金城真次と記念撮影をした大城良子さんは「何回も劇場に通っているが、初めて触れ合えてうれしい」と満面の笑みを浮かべていた。7月には組踊上演後に出演者のトークショーが初開催され、観客との交流が増えてきている。ファンを定着させ、人気実演家を育てる企画を活発化させてほしい。(伊佐尚記)

「鶴亀二児其ノ後ノ噺」で酒癖の悪い鶴松(宇座仁一、右から2人目)を叱る亀千代(石川直也、右端)=25日、浦添市の国立劇場おきなわ
金城真次(左から2人目)と写真を撮るファン