県内保健所 エボラ阻止体制強化 搬送や隔離対策確認


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感染症患者搬送用カプセル(アイソレーター)について説明する宮川桂子医師(右)と照屋美貴医師=6日、南風原町宮平の南部福祉保健所

 西アフリカで流行が続くエボラ出血熱が県内で発生した場合を想定し、県内の保健所では患者の搬送体制の準備が進んでいる。県内でエボラ出血熱に対応する医療機関は、琉大医学部付属病院と県立南部医療センター・こども医療センターの2カ所。患者をいずれかの病院に搬送するのは保健所の役割だ。

保健所の担当者は「新型肺炎(SARS)の時に配備された機材が使用できるよう、あらためて確認し備えている」と話し、関係機関と24時間連絡が取れる体制も整えている。
 県内医療関係者の危機管理意識が高まるきっかけになった事案がことし9月に発生した。リベリアから帰国した60代男性が帰国後10日目に発熱し、県内のかかりつけ医院を受診。状態が改善せず、その3日後に中頭病院を受診した。
 結果的に熱帯熱マラリアと診断されたが、エボラ出血熱感染の疑いを含む患者を県内で対応する2カ所の医療機関にどのように搬送するか、その体制が重要だ。同病院の新里敬医師は「流行地からの渡航歴があり発熱があった場合は、地域の医療機関への受診は控え、検疫所や保健所へ連絡をし、その指示に従ってほしい」と話している。
 県内で出血熱の患者が出た場合に備え、南部・北部・八重山・宮古の四つの保健所には、二次感染を防ぐ感染症患者搬送用カプセル(トランジットアイソレーター)や防護服、搬送専用車両を用意している。南部福祉保健所健康推進班長兼保健総括の宮川桂子医師は「防護服は着る時よりも(付着物が飛散しないように)脱ぐ時に気を付ける必要がある」と話し、今後着脱の練習も行う予定だ。
 搬送用カプセルは、2003年に新型肺炎流行時に導入された。内部の空気をフィルター付き空気排出装置で排気。中の気圧を外部よりわずかに低い陰圧にして、病原体が外部に漏れないようにする。出血熱の流行に伴い防水の防護服、手袋やマスクなど10セットが各保健所に配置された。移動に使う専用車両は運転席と後部座席が遮断され、患者を乗せるスペースに透明のカーテンで仕切りがある特別仕様となっている。
 一方、13年4月に中核市になった那覇市では、那覇市保健所が患者の搬送を担う。担当者は「車椅子での移動を想定しており、頭からかぶるフード型の防護フードと防護服を用意している。防護服の数が十分でないので追加購入する予定」と話している。
(知花亜美)