元学徒が最後の館内講話 ひめゆり祈念館


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
高校生を前に体験を語るひめゆり平和祈念資料館の島袋淑子館長=22日、糸満市伊原

 糸満市のひめゆり平和祈念資料館(島袋淑子館長)で、1989年の開館以来行われてきた元ひめゆり学徒隊の生存者による修学旅行の団体などを対象にした「館内講話」が22日、終了した。元学徒の生存者らは「証言員」として講話をしてきたが、高齢化により、事前予約を受け付け講話を実施するのが難しくなったのが理由。

最後の館内講話で島袋館長(87)は、研修旅行で沖縄を訪れた146人の高校生を前に「戦争の準備が始まったら止められない。平和憲法が変わろうとしている今が一番大事な時」と語り掛けた。館内講話は終了するが、館内での証言活動は4月以降も継続する。
 沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒・教師による「ひめゆり学徒隊」は70年前の1945年3月23日夜、南風原町の沖縄陸軍病院に動員され、病院壕内で負傷兵の看護、壕の外での水くみ、伝令などをした。教師、生徒合わせて240人が動員され、136人が死亡した。
 最後となった講話で、島袋館長は「日ごろ訓練したことが役に立つ。1週間すれば帰れる」と思い、陸軍病院に向かった70年前を振り返った。しかし、学徒たちの戦場は約3カ月続き、絶え間なく砲弾が飛び交っていた。島袋館長は病院壕で見た重症患者の様子や、傷ついた友人を助けられなかったことなどを語り、何度も「私たちは本当の戦争を知らなかった」と口にした。
 「人の命は地球よりも重い。それを奪うのが戦争。天災は止められないが、人間が起こす戦争は止められる。今は言論の自由がある。おかしいと思ったら、戦争はだめだと声を上げられる人になってください」。70年前の自分と同年代の生徒たちに思いをつないだ。
 講話を聴いた女子高校生(17)は「戦争のことを学んできて分かっているつもりだったけど、体験者の話を聴いて理解していなかったと思った。人の命を尊重しないといけない」と話した。
 証言員たちはピーク時には館内・館外合わせ年間千件以上の講話を実施してきたが、体力面を考慮し、2013年度には館外講話を終了した。開館当初27人だった証言員は現在9人。年齢は86~89歳で、証言員の年齢や体力を考慮すると、これまでと同じように半年先の予約を受けることが困難になっている。
英文へ→Former Himeyuri student delivers final lecture at museum