土木職、行政が引き抜き 県建設協、対策要請へ


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(左)転職者の転職先 (右)転職者の勤続年数

 公共工事などの建設需要が増大する中、発注者である自治体で土木職が不足し、建設会社などの技術者が“引き抜かれる”実態があるとして、県建設業協会(下地米蔵会長)は県や市町村に新卒採用の促進や計画的な人材育成を要請する。

 県建設業協会は昨年3月末に会員企業361社を対象に転職に関する調査を実施、48社(回答率13・3%)が回答した。2013度に公務員に転職した技術者は29社36人で、転職先としては市町村が最も多く、勤続年数は5年以上20年未満の中堅社員が多い傾向が浮き彫りとなった。
 同協会は、技能・技術者不足で入札の不調・不落や工期の遅延が生じている現状に拍車が掛かると懸念。下地会長は「現場を管理する技術者の不在は受注機会の喪失につながり、企業にとっては死活問題」と強調し「10年以上かけて育てた人材の流出は企業の雇用意欲をそぐ。雇用拡大を推進する立場の行政こそ、その場しのぎでなく、計画的な雇用・育成をしてほしい」と訴える。
 一方、一括交付金などによる建設需要が増える中、発注する自治体側も人手不足が課題となっている。那覇市は、2013年度に土木職の不足を補うため、採用年齢を引き上げ試験を実施。民間経験者を中心に12人を中途採用した。本年度は3人を新規に採用したが、受験者数は伸び悩み、依然として不足気味という。他市町村との人材の“取り合い”も生じている。同市の担当者は「大型開発が一段落し、人員を縮小してきた中で、一括交付金事業や施設の維持管理などで技術者が必要になっている」と話した。