台湾食品規制に県内業者反発 政府に不満、正常化求める


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台湾側が示した食品輸出の際に必要な証明書

 台湾への日本産食品の輸出規制が始まった15日、県内の食品メーカーや事業者からは「情報が錯綜(さくそう)している」「中ぶらりんの状態だ」と台湾の輸出規制に対する不満の声が聞こえた。沖縄から輸出の2位を台湾向けが占める。農林水産省は台湾向けの証明書を発行しないため、各事業者は独自で輸出できる方法を調べるなど対応に追われた。日本政府に輸出正常化に向けた取り組みを求める声も上がった。

 沖縄総合事務局農林水産部は「台湾側の示す規制強化は受け入れられず今後も証明書の発行は予定していない。台湾側が示した情報を事業者が収集して、有効である証明書かどうかを台湾側に確認する必要がある」とし、事業者任せの姿勢を示す。
 輸出の約6割が台湾向けのオリオンビール(浦添市)は「はっきりした情報が来ていないので、台湾の輸入業者にそれぞれ確認している」とした上で「対象商品がどれかも分からず何を信用したらいいか分からない」と苦言を呈した。
 県物産公社(那覇市)は県産品以外に県外の食品なども取り扱っており、全体の輸出量の約3割は台湾向けだ。海外事業部の金城辰三部長は「輸出する際のコストや労力が増えるし時間もかかる。台湾の中で風評被害が広まり県産品が敬遠されないかが心配だ」と気をもむ。
 県内メーカー以外に、物流業者からも懸念の声が聞こえる。ヤマト運輸はことし、台湾で国際クール宅急便を始めたばかりだ。沖縄ヤマト運輸は「顧客からの問い合わせもあり、これから産地や商品の内容を確認して慎重に対応していく。国と国との問題だが、スムーズに日本からの輸出ができるように対応してほしい」と話す。
 台湾側は14日、商工会議所などが発行した証明書に都道府県が記載されれば証明書として受け入れると発表した。那覇商工会議所が発行する原産地証明書は、都道府県が記載されていないため「備考欄に記載して対応する」という県内事業者も出てきた。那覇商工会議所企画業務部の幸地勲課長補佐は「国から指示があるわけでもないので、この証明書で輸出できるとは断定できない」と話す。
 沖縄地区税関の貿易統計によると、沖縄から台湾への食料品・飲料品の輸出は香港に次いで第2位で、2億7100万円を占める。
(阪口彩子)