県芸大、手作りの紙で衣装 自然と共生、創作舞踊に


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雁皮紙で作られた舞台衣装(中央)を制作した県立芸大の崎濱秀昌教授(右から2人目)と、提案者の高嶺久枝教授(同4人目)=那覇市首里崎山町の県立芸大

 ジンチョウゲ科の落葉低木・ガンピ(雁皮)から作る雁皮(がんぴ)紙を素材にした舞台衣装が10日、県立芸大で開かれる「第26回琉球芸能定期公演」で披露される。舞台衣装は、同大琉球舞踊組踊コースの高嶺久枝教授の依頼で、同大教員と学生が共同制作した。
公演では創作舞踊「國頭サバクイ」に登場する山の神がまとう。高嶺教授によると「紙衣(かみこ)」の服は珍しく、県内で舞台衣装に用いられる事例もめったにない。
 紙衣の衣装を通して、自然と共生した先人の歴史を伝えたかったという高嶺教授。「山の神の聖なる雰囲気が醸し出されると思う。首里城は国頭村から運んだ木材で造られた。私たちも自然から学び、(生き方を)発展していけたらいい」と喜びを口にした。
 雁皮紙作りは、同大デザイン専攻の崎濱秀昌教授が技法をひもとき、同大4年の長浜翼輝さん(22)が大学内での作業に加わった。フィリピン産のガンピを煮込み、繊維を抽出した。その後、雁皮をのりと水で混ぜて液体をつくり、型に流し込んだ。
 天日で乾かした雁皮紙は畳一畳ぐらいの大きさで、薄い象牙色をしている。同大大学院デザイン専修の我如古真子さん(34)が、衣装をデザインし縫製を手掛けた。森林の連なりと、天から降り注ぐ空気が青い色彩で描かれている。9月上旬から約1カ月間で全行程を終えた。
 崎濱教授は「ガンピを溶かし込んだ液体を1回で一気にすいたので、紙の表面の所々に木の皮が残った。山の神の強固な雰囲気を表現できた」と語った。我如古さんは「手仕事で作られた紙が、伝統芸能の衣装として使われるのはうれしい」と声を弾ませた。
 舞台本番では「國頭サバクイ」で山の神を演じる同大琉球舞踊組踊コースの比嘉大志さん(21)が身に付ける。公演は10日午後2時から、同大内奏楽堂ホールで開かれる。入場料は千円。問い合わせは(電話)098(882)5080。