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琉舞道場50年 地域と歩む/浦添/玉城千枝さん/愛好会も結成、芸能広める


琉舞道場50年 地域と歩む/浦添/玉城千枝さん/愛好会も結成、芸能広める 弟子に稽古をつける玉城千枝さん(左端)=浦添市安波茶の玉城千枝琉舞道場
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 【浦添】国指定重要無形文化財「琉球舞踊」保持者で、玉城流てだの会家元の玉城千枝さん(76)が、浦添市安波茶に開いた道場が、開設50年を迎えた。玉城さんは「玉城節子先生や姉、家族の支えがあり、地域と一緒だったから続けられた」と振り返る。
 玉城さんは糸満市に生まれ、母の勧めで7歳の頃に琉球舞踊を習い始めた。那覇へ引っ越し、玉城節子さんに師事。舞踊の稽古にはいつも、4歳上の姉・又吉靜枝さんがいた。
 結婚を機に1970年ごろ、まだ「村」だった浦添へ移り、73年に目標だった道場を開設。玉城流の教師免許授与をきっかけに74年、自身の名前を冠した道場名にあらためた。
 20代前半には全国縦断公演や旧ソ連、ポーランド公演など海外でも活動し、75年からは沖縄歌劇や芝居に力を入れた。
 地域にあっては、浦添市文化協会で女性として初めて会長になるなど、市や商工会、自治会活動に積極的に参加。古典芸能愛好会を結成して、地域の人を呼び舞踊の鑑賞会を開くなど、地道な活動を重ねて浦添の地に舞踊を根付かせた。
 「誰(だ)れが選んでくれたのでもない、自分で選んで歩き出したみちですもの」。道場の一角に色紙を飾っている。戦時中に初演された不朽の名作「女の一生」中のせりふだ。したためたのは同作のヒロイン布引けい役で人気を博した故杉村春子さん。芸能一筋に生きると決め、現在も第一線で舞台を務める玉城さんの姿は、80歳を過ぎても舞台に立ち続けた杉村さんと重なる。
 玉城さんは「心が折れそうなとき、色紙の言葉で気持ちを奮い立たせてきた。落ち込んでも、すぐ持ち直せるように生んでくれた親にも感謝しないとね」と明るく話す。「周囲の皆さまがここまで引き上げてくれたことへの感謝を胸に、踊り続けたい」と瞳を輝かせた。
 (藤村謙吾)