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識者の視点 島村 聡氏(沖縄大教授) 複数の支援、一体的運用を


識者の視点 島村 聡氏(沖縄大教授) 複数の支援、一体的運用を 沖縄大学の島村聡教授
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 ひとり親(特に母子家庭)に関し、沖縄は県外と比しても勤労意欲が高く正規職員の比率も高い。一方で子育てを優先して不安定なパート雇用を選択するケースも多い。離婚相手の経済力が低いこともあり、養育費を受けていない事案が多いことも知られている。
 今回の物価高は、収入の多少に関わらず、ひとり親家庭全体に影響が大きい。望まれているのは現金給付や児童扶養手当の増額といった金銭的な支援であり、その行き先は食費が最も多くなると考えられるが、水光熱費の滞納対策に充てる家庭も相当数あると考えられる。
 無料塾の周知度は過去の県の子ども調査では高い。ただ、ひとり親の特徴として無料塾が近くにない場合の送迎が課題となる。また、より高い収入を得るためにスキルアップをしようとしても時間的な余裕がなく受講できないことが想定される。しかし、家庭へ派遣するヘルパーに利用時間の制限があり、企業の採用とスキルアップの期間に時間差があるためなかなか制度の利用に結びつかない。
 このようなことから、ひとり親家庭には複数の支援が同時並行で提供される必要がある。
 例えば、家庭にはヘルパーが派遣され、子どもが孤立しないように家事援助や無料塾への送迎が行われる。親はその時間に採用された企業で収入を得ながらジョブトレーニングを受け、ステップアップを目指していくことで希望した職種で安定した雇用と収入を確保していくという流れである。経済的にも精神的にも余裕のないひとり親家庭にはこのように制度の一体的な運用を進めてほしい。
(社会福祉・障がい者福祉施策)