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歴史感じるリゾートの村


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄本島中部から北部の西海岸側に位置する恩納村はサンゴ礁の広がる海岸が注目され、国内有数のリゾート地として発展した。近年は「サンゴの村宣言」を行い、サンゴの保全にも積極的に取り組んでいる。豊かな自然とともに、社会や文化を育んできた恩納村の歩みを紹介する。
 恩納村は西側を海、東側を恩納岳などの山々に囲まれている。南北27.4キロ、東西4.2キロと細長く、うるま市石川と接する部分は本島の東西間で最も狭い。
 村内には琉球王府時代に整備された主要街道の一つ「国頭方西海道(くにがみほうせいかいどう)」が通っていた。中でも村仲泊の一里塚から真栄田の御待毛(うまちもう)は保存状態が良く、村は同区間を「歴史の道」として整備。2004年に国史跡に指定された。街道沿いには縄文時代の貝塚や住居跡のほか、琉球王国時代に整備された石畳道などがある仲泊遺跡や、護佐丸が幼少期を過ごした山田城跡といった国指定を含む多くの史跡が点在する。
 17~18世紀の歌人吉屋チルーと恩納ナビーを輩出した琉歌の里で、1991年から琉歌大賞事業も行われている。万座毛にはナビーの琉歌碑が設置され、ナビーをモチーフにした「ナビーちゃん」が村のイメージキャラクターとして活躍する。
 1975年に本部町で開かれた沖縄国際海洋博覧会を契機に村のリゾート産業が盛んとなり、現在は20以上のリゾートホテルが立地する。宿泊客数は右肩上がりに伸び続け、村内主要ホテルの概算宿泊客数は2019年、約284万人だった。宿泊客数は新型コロナウイルスの感染拡大で19年比の半分以下に落ち込んだ年もあったが、23年は約245万人と回復の兆しを見せている。
 漁業者の所得向上を図るため、村漁業協同組合は海藻養殖に積極的に取り組んできた。特に村の基幹産業であるモズク養殖は技術の確立に向けて試行錯誤を繰り返し、1976年に本モズクの中間育成技術を発見した。翌年には県内初の収穫に成功した。現在は本モズクや糸モズク、両者の特徴を併せ持った恩納モズクが生産され、県の拠点産地に指定されている。2023年度の収穫量は本モズク1175トンで、過去最高の水揚げ量だった。

村を挙げサンゴ保全

 恩納村では2000年前後、白化現象などでサンゴ礁が壊滅的な被害を受けた。恩納村漁業協同組合はサンゴの保全や研究に着手し、現在は村や全国の生活協同組合などと連携しながらサンゴの植え付け活動に取り組んでいる。
 豊かな自然環境を守り、世界一サンゴと人に優しい村を目指そうと、村は2018年に「サンゴの村宣言」を行った。宣言後は真栄田岬と万座毛沖でそれぞれ年1回、リーフチェックを行っている。サンゴに優しいマリンレジャーを実現するためのガイドライン「Green Fins(グリーン・フィンズ)」を日本で初導入した。陸域でもサトウキビの葉がらを畑に敷き詰める「葉がらマルチング」の設置や、イネ科の「ベチバー」の植え付けなどを通じて、赤土流出によるサンゴ被害を防ぐ取り組みを続けている。

 取材・武井悠、デザイン・仲本文子