<金口木舌>ドラえもんがもたらす力


<金口木舌>ドラえもんがもたらす力
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 先日、中学校の教員から興味深い話を聞いた。教員が、課題を抱えている生徒の保護者に質問しても「生徒の様子をうまく聞き取れないことがある」と言う。しかし、そんな保護者でも、担任ではない学校の支援員に悩みを打ち明ける場合が多いそうだ

▼「教員は心配でしょうがないが、保護者は叱られていると感じるようだ」。教員と保護者の思いは時にすれ違う。支援員に話しやすいのはなぜか。この教員は「斜めの関係だから」と推察する

▼「斜めの関係」とは利害関係のない第三者との関係といわれる。身近な地域の人や、おじやおば辺り。文学作品やアニメにも登場する。「ドラえもん」ののび太とドラえもんとの関係もその一つか

▼ドラえもんは、臆病でのんびり屋ののび太を励まし、背中を押す。その声を約26年間務めた声優の大山のぶ代さん。作者の藤子・F・不二雄さんと共に国民的アニメに育てた。先日、大山さんの訃報が届いた

▼ポケットから取り出す道具と同様、大山さんが発する愛嬌のあるだみ声は、のび太を助ける力となった。現実の社会でも真上からの叱声ではなく斜めから導く声を聞きたい。