「誹謗中傷」と「批判」の違いを意識しよう -モバプリの知っ得![119]


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

政府は先月26日、ネット上で誹謗中傷【※1】した人を特定しやすくする法改正案を国会に提出しました。このまま法改正が成立すれば、来年末にもルールが変わる見通しです。
昨年、テレビ番組に出演していたプロレスラーの木村花さんにSNSで誹謗中傷コメントが多く集まり、木村さんは自ら命を絶つという痛ましい事件が発生したことで、「誹謗中傷」が大きな問題となりました。

誹謗中傷で傷つけられた場合、相手の個人情報が分からないと裁判で訴えることができません。そのためにはSNSを運営している会社に相手のIPアドレスの提供を求めたり、ネットプロバイダに情報開示をお願いするなど、かなりの手間がかかり、ほとんどの人は傷つけられても「泣き寝入り」をする場合がほとんどでした。しかし今回の法改正が成立すると、書き込んだ人を特定する時間・手間が省かれるので、泣き寝入りをせずに済むかもしれません。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

「誹謗中傷」と「批判」の境界線ってどこ?

「消えろ」「クズ」など相手の人格を否定することは誹謗中傷ですが、「それは違うと思います」など相手の意見を否定することは批判になるため、ルール上はセーフです。しかし、誹謗中傷と批判の境界線を常に意識しないと、「本人は批判のつもりが誹謗中傷だった」ということになりかねません。批判と誹謗中傷の線引きは、急に判断ができるわけではありません。そのためには、常に自分の言葉の使い方には意識しながら発言する必要があります。

政治家が失言などで辞任し、企業の役職者なども差別発言で謝罪する時代です。昔は許された言葉・表現も、人々の感覚が変わると社会で受け入れられなくなります。また有名人に対しての誹謗中傷を「有名税」と呼ぶことがありますが、百歩譲って被害者が心のダメージを軽くするために使うならまだしも、「アンチコメントなんて有名税みたいなものだ」と傷つけた本人が言い張るのはおかしいということは認識しておきましょう。

SNSでは皆が自由に意見を発信しているため、中にはとんでもない言葉が飛び交い、その中で感覚がまひし、自分も使いそうになるかもしれません。しかしそこはグッとこらえて、丁寧な言葉使いでいきたいですね。

※1 誹謗中傷 … 「消えろ」「クズ」など、相手を傷つける悪口。「名誉毀損」や「侮辱罪」に問われることもあります。誹謗中傷と「批判」は違うものの、関係性やタイミング、前後の文脈によって変化するため、言葉の使い方に気をつけないといけません。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」3月7日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/