沖縄の音楽シーンに現れた「The Hypes」は〝異端〟か

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The Hypesのメンバー。(写真左から)Kotaro Tsuzaki、ONGR、Hikaru Yonamine、Eri Fujisawa

 2015年、沖縄の音楽シーンに現れたThe Hypes(ハイプス)。DIY音楽フェス“ODDLAND”への2年連続出演の勢いをそのままに、2016年には自主アルバム『TAIDA』を初リリース。グランジ、オルタナティブロックを基盤とした曲調に、轟音を響かせる圧巻のライブパフォーマンスで観る人を魅了する4ピースバンドだ。

 今年に入ってからは、個性的なアーティストラインナップで注目を集める音楽フェス“りんご音楽祭2017”への出演の決定や、Awesome City Clubやnever young beachといった、ネオ・シティポップ世代の沖縄公演のオープニングアクトを務めるなど、飛躍的な活躍を遂げている。

 そんな彼らが9月13日に全国流通盤となる1stシングル「Thai Cobra Death March」をリリースする。沖縄音楽シーンの中でも異端な存在の彼らが何を考え、目指す先はどこなのか。The Hypesの正体に迫る。


拠点を東京から沖縄へ


―さっそくですが、それぞれ担当パートも含めた自己紹介をお願いします。


Tsuzaki

「Kotaro Tsuzakiです。26歳になります。ボーカルとギターを担当しています。好きな動物はドラゴンです」
 


Yonamine

「Hikaru Yonamineです。28歳です。ギターを担当しています」
 


ONGR

「ONGR(オニギリ)と言います。21歳になります。ドラムとコーラスを担当しています。ご飯より、パン派です」
 


Fujisawa

「Eri Fujisawaと申します。ベースを担当しています。年齢はTsuzakiと同じ26歳です。5月からThe Hypesに加入しました」
 


―The Hypesの結成から今までの流れを教えてください。


Tsuzaki

「高校2年の頃に、SNSでThe Hypesの前身バンドのメンバーを募集して集まったのがギターのHikaruでした。そこから進学のために一緒に上京しまして、東京で新しくメンバーを迎えてThe Hypesを結成しました。結成から今まで10年近くHikaruとは一緒にバンドをやっています」

「俺の家庭の事情で、2015年に沖縄に戻らなきゃいけなくなったんですけど、Hikaruは一緒に帰ってきてくれました」


メンバーの脱退を繰り返しながらも…


―沖縄に帰っても、The Hypesの活動は続けていこうと思っていたんですか?


Tsuzaki

「それは思っていました。メンバーを新しく見つけて2人でゼロからやっていこうってことで。急遽沖縄に帰らなきゃいけなくなったんですけど、その前から2015年にコザで開催された音楽フェスODDLAND※1への出演が決まっていたので、そこまでは東京で活動をしていたメンバーでやりました」

「その後、個人的に動いて沖縄の音楽関係の人たちとの繋がりも増えてきたんですけど、肝心のメンバーは決まらずに1年間バンド活動ができない時期が続きました。いよいよ本気でメンバーを決めないと帰ってきた意味がないと焦っていた頃に、Fujisawaの前にベースを弾いてくれた方とONGRに出会いました」
 


ONGR

「僕はODDLANDで、The Hypesのライブをお客さんとして見ていたんです。『初めて見るけど、かっこいいバンドだな』と思っていたら、その後メンバーに誘われたのでとても嬉しかったです」



―メンバーが固まって、沖縄でも活動が再開できるようになったんですね。その後2016年に初となる音源をリリースするのですが、音源を出そうと思ったきっかけは何だったんですか?


Tsuzaki

「メンバーを探している時期に、『俺らがどんな音楽をやっているのか』っていう名刺代わりになるための曲を作っていました。東京にいたときに、途中までレコーディングしていた曲があったので、新しく付け加えて録っていたんです。だけど、作っている間にメンバーが決まったので、意味なかったんですけどね(笑)。でも、せっかく途中まで録っていたので、新メンバーを加えて録音し直してリリースする流れとなったんです」



音楽性の進化と、つかんだチャンス…


―初となる音源「TAIDA」では、グランジやオルタナティブの色を全面に出した曲調でしたけど、そこからThe Hypesの音楽性ってこの1年でガラッと変わりましたよね?


Tsuzaki

「バリバリ変わりましたね。きっかけは、東京にいた時に仲良かったバンド仲間たちがシティポップの要素を含んだ音楽をやっていて、それに影響されて僕らの元々あったグランジを基盤としたダーティーさは残しつつ、都会的な音の要素も入れていくことに挑戦してみたんです」


―また今年に入ってからAwesome City Club※2や、never young beach※3といった、今、日本のバンドシーンで最も勢いに乗っているバンドとの共演が立て続けに決まっていったんですが、その経緯について教えてくれますか?

Tsuzaki

「ライブハウスOutputの上江洲修店長にお誘いしてもらいました。俺らがまだOutputでライブをしたことがなかった時に、たまたま上江洲さんと話す機会があって後日主催イベントに誘ってもらったんです。

その時、俺らとしては初めてのOutputでのライブだったので、いつも以上に気合いを入れてライブに挑みました。その時のライブを気に入ってもらえて、その日のうちにnever young beachのオープニングアクトの話をいただきました」



―彼らとのライブを通して、感じたことなどはありますか?


Yonamine

「never young beachはメンバーに東京時代の知り合いがいて、久しぶりに再会できて嬉しかったです。相変わらずとてもかっこよくてバンドとしても個人としても、良い経験になりました」


ONGR

「僕は元々never young beachもAwesome City Clubも大ファンだったので、対バンさせてもらって夢みたいでした。

ライブに関しては2バンドとも『空気の作り方』がとても上手くて…。僕らはお客さんに対して、どうにかインパクトを与えようっていう思いでライブをやっていたので、そういった緩急をつけながら場の空気を作ることも、ライブをする上では大切なんだってことを学びました。今までお客さんを取り込めてなかったなぁと。レベルの違いを痛感しました」


Fujisawa

「第一線でやっているバンドって、その人たちを見に県内外からたくさんのお客さんが集まるじゃないですか。そしてそのお客さんに対して、ちゃんと応えるパフォーマンスをしていて、自分たちの演奏のあり方についてすごく考えさせられました。

前日にバーベキューもして、交流する時間があったんですけど、年も近くて気さくな人たちでした。だけど、ステージに立ったらスイッチが入ったように人が違って、かっこよかったですね」


どん底からの大逆転。オーディションでつかんだ音楽フェスへの出演


―また大きなニュースといえば、長野県で開催される“りんご音楽祭2017”への出演が決定しましたね。オーディションを勝ち抜いて出演を勝ち取った形になりますが、その経緯を教えてもらえますか?


Tsuzaki

「ライブハウスG-Shelterのハイナさんから、『りんご音楽祭のオーディション、受けた方がいいよ』って言われていまして。『主催の古川さんにライブを見てもらって意見を聞けるだけでも、勉強になるから』って言われて、オーディションを受けることを決意しました。でも、まさか受かるとは思っていなかった(笑)」


―オーディションでのライブの手応えはなかったんですか?


Yonamine

「正直オーディション終了後、ライブができた自信がありました。手応えもありました」


ONGR

「オーディションってこともあって、見ているお客さんは僕らのことを知らない人が大多数だし、失うものがなかったので、精一杯ライブができました。僕も手応えはすごくありましたね」


Fujisawa

「私も気負わずにライブができました」


Tsuzaki

「俺もライブが終わった後は、ものすごく手応えありました。Outputで初めてライブした時もそうなんですけど、俺らは自分たちを追い込んだときのライブは強いなって実感しました。観ていたお客さんからの評価も良かったし、自信はありました。

でも、終わった後に古川さんのところに話を聞きに行ったら、評価はものすごく辛かったですね…。なので、これは落ちたかなと思っていたんですが…」

「『ライブどうでしたか?』って聞きに行ったら、『良かったよ!』って言ってくれたんですけど、『本音の感想を聞かせてください』って問いつめたら、多くのダメ出しと改善点をもらいました。でも、俺らのライブを見た上で、今後どうした方がいいかっていうアドバイスもくださったので嬉しかったです」


ONGR

「個人的に、初めて参加する県外のフェスなんです。まさか遊びに行くよりも先に出演するとは思っていなかったですけど、見ているお客さんの心に爪痕を残せるように頑張ります。

尊敬しているアーティストもたくさん出演するので、すごく楽しみです!」


Fujisawa

「見た人が楽しめるようなライブをしたいです。毎年沖縄からもたくさんのお客さんが参加しているって聞いたので、期待を背負っていると思って頑張ります」


同じ曲は二度と聴けないThe Hypesのライブ


―ここからはThe Hypesというバンドについて深く聞いていきたいんですけど、まず最初に皆さんが影響を受けたアーティストっていますか?


Tsuzaki

「個人的な音楽のルーツとしては、Nirvana※4が好きです。The Hypesとしての根幹もNirvanaの音楽性であるグランジロック、オルタナティブロックに影響されています」


ONGR

「僕はThe Hypesに加入するまで、グランジやシティポップを聴いてこなかったんです。J-POPや歌謡曲が好きだったんですけど、加入してから好きな音楽ががらっと変わりました。プレイヤーとして影響を受けているバンドは、D.A.N.※5ですね」


Yonamine

「僕は母親の影響で小さい頃から洋楽のポップスを聴かされて育ってきました。高校にあがってから、Green Day※6やNirvanaといったロックに出会って今に至ります。プレイヤーとしては、グランジやオルタナティブロックに影響されています。他の3人と違って、シティポップはあまり聴かないですね(笑)」


Fujisawa

「日本のバンド、Number Girl※7に影響されています。自分が演奏するスタイルとしては、親の影響で久石譲を聴いて育ってきたので、久石さんに影響されていると思います。コードの重ね方とか参考にしています」


―The Hypesの曲作りは、どのような流れで行っているんですか?


Tsuzaki

「全体的な曲作りの主導権は俺にあります。思いついたフレーズをスタジオに持って行って、それを元に全員でジャムセッションをしながら、その時に新しく生まれたフレーズを組み立てながら曲を作っています。なので、1カ月に1曲できれば良い方で、曲作りのスピードは遅い方だと思います。今回リリースする”Thai Cobra Death March”は、完成までに半年以上かかりました」

「この曲の作り始めの頃は、突発的に良いフレーズと歌詞が浮かんできて順調にいっていたんですが、途中から思い詰めちゃって上手くいかなくなって…。結局はレコーディング直前まで試行錯誤していました」


ONGR

「僕らは新曲ができたら、すぐにライブで披露するんです。お客さんの反応を見たり、自分たちの感触を確かめたりしながら、曲を整えていきます。なので、毎回ライブの度に少しずつ曲が変わっていっているんです。そうやって完成に近づけています」


―今回のリリースする『Thai Cobra Death March』は、全国発売となりますよね?


Tsuzaki

「CH6のユーさんが新しく始めたレーベルから、全国流通させてもらいます!1年前に曲作りを始めた時から、次に作品として出すにはこの曲しかないって思っていたので、全国で発売されるので是非とも多くの人に聞いてほしいです」



同世代が集まって、”形として残すこと”



―9月16日にValve Fictionとケンゴリアンズという同世代3バンドでライブを企画するという話を聞きました。同世代のバンドだけでイベントを開催することに、何か狙いはあるんでしょうか?


Tsuzaki

「年を重ねるにつれて、同世代のバンドも少なくなってきています。そこで同級生で派閥を組むとかっていう事じゃなくて、純粋に活動を続けているこの3バンドをもっと沖縄の皆に知ってもらう機会になればと思って企画しました」

「元々Valve Fictionのジョシュアと僕は高校も同じで、気心の知れた間柄なんですけど、そこにケンゴリアンズっていう昔からリスペクトを持っていた同世代のバンドも加わって1つのことを作り上げることに、ワクワクしています。遊びにきてくれたお客さんには、先着でこの3バンドの曲が入ったスプリットCDのプレゼントもあります。そうやって音源という形としても残せるので、それも嬉しいことですね」


ジャンルをつくれるバンドになりたい



―最後にThe Hypesとして考えていることや、今後の展開について教えてください。


Tsuzaki

「沖縄の音楽シーンって、米軍基地があることからヒップホップやメタル、ハードコアっていうアメリカの音楽文化が強く根付いていて、そことは切っても切り離せない関係にあると思うんです。そういう昔から沖縄に根付いている音楽文化の要素を取り入れて、成長できればと思っています。それは全国どこを探してもない沖縄特有の空気感や文化なので」


ONGR

「僕が思っていることは、The Hypesの音楽っていうジャンルを作れるバンドになりたいです」


Fujisawa

「今ありがたいことに、多くのライブに誘ってもらえています。私としては、そこで出会ったいろんなジャンルの音楽を吸収しながら、その中でThe Hypesとしてのバンドの形を作って行けたらなと思っています。そして、どんなライブに出ても輝けるように頑張っていきたいです」


Yonamine

「沖縄で活動を再開してから、ありがたいことに良い感じできていると感じています。期待してくれる人たちがいるから、その人たちに応えていきたいのもあるし、なおかつ自分たちが一番楽しいことができたらベストかなと思います。楽しさのステップアップをしていきたいですね」


Tsuzaki

「The Hypesとしては、もっとツアーも含めて内地でライブ活動をできるようにしていきたいと思っています。シティポップどうこう言われていますけど、俺らの根底はロックバンドなんで、自分たちの柱はぶらすことなく今の日本の音楽シーンに食い込んでいければなと思っています。泥臭く、足動かして行動に移してしていきたいと思います」




※1 ODDLAND沖縄市コザ運動公園で「奇妙な国」をテーマに開催されたDIYフェスティバル。

※2 Awesome City Club2013年春結成。「架空の町、Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティポップを発信する男女混成5人組。クラウドファンディングやVRなど最新のテクノロジーを駆使した活動が各所から注目を集めている。

※3 never young beach2014年春に活動開始。土着的な日本の歌のDNAをしっかりと残しながら、どこか海外の海と山が見えるような匂いを感じさせる。

※4 Nirvana1989年に結成。1991年に発売された『ネヴァーマインド』の驚異的なセールスにより、全世界にグランジロックムーブメントを巻き起こした。

※5 D.A.N.2014年結成。いつの時代でも聴けるジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求した3ピースバンド。

※6 Green Day.1990年にデビュー。パンクバンドとしては史上初のグラミー賞の最高賞「最優秀レコード賞」を獲得するなど、パンク史においても重要な地位に位置づけられるバンド。2015年にロックの殿堂入りを果たす。

※7 Number Girl日本のオルタナティブロックバンド。1995年に福岡で結成され、2002年に解散した。



― The Hypes ―

 ボーカルのツザキコータローを中心に結成されたバンド。2010年東京で結成。2015年に拠点を沖縄に移し現在の体制に。2016年5月21日に1st EP「TAIDA」を自主レーベル〈OzANaRi records〉よりリリース。

 2017年Never Young BeachやAwesome City ClubのワンマンO.Aを務め、県内DIYフェス「ODDLAND」に2年連続出演、東京へのリリースツアーなど勢力的に活動中の突如沖縄に現れたニューカマーバンド。9月13日に初となる全国流通盤「Thai Cobra Death March」を発売する。
 

HP:http://live-conn.com/archives/band/the-hypes
Twitter:https://twitter.com/the_hypes
Facebook:https://www.facebook.com/hypejp/

~ Release info ~


「Thai Cobra Death March」

発売日:2017年9月13日
価格:1,000円(税込)
品番:KOZA-001
販売:IZAKOZA DISCOS

収録曲
 1.Thai Cobra Death March
 2.Can You Keep Lightning?
 3.Thai Cobra Death March(GINTENDAN Remix)

 


【The Hypes LIVE info】

9/16  3 Man Show”PRIDE”@沖縄市SLUM BAR

9/17 「Thai Cobra Death March」インストアライブ@タワーレコード那覇リウボウ店

9/23 りんご音楽祭2017@長野県松本市アルプス公園

10/7 マシュマロ☆キッス@那覇Output

10/21 The Hypes pre.「Center Chaos Club」@沖縄市コザ周辺ライブハウス4会場



聞き手・野添侑麻(のぞえ・ゆうま)

 音楽と湯の町別府と川崎フロンターレを愛する92年生。18歳からロックフェス企画制作を始め、今は沖縄にて音楽と関わる日々。大好きなカルチャーを作っている人たちを発信できるきっかけになれるよう日々模索中。沖縄市比屋根出身。

 



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