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【記者解説】「人権、不平等な状態」国際世論に訴え 新基地建設など現状を「人権問題」と捉え 玉城デニー知事・国連スピーチ


【記者解説】「人権、不平等な状態」国際世論に訴え 新基地建設など現状を「人権問題」と捉え 玉城デニー知事・国連スピーチ 国連人権理事会の特別報告者(右)と面会する沖縄県の玉城デニー知事=18日、ジュネーブ(共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 玉城デニー知事は日本時間の19日午前0時ごろに、国連人権理事会でスピーチする。過重な米軍基地負担により、事件事故が後を絶たず、平和な日常が脅かされている現状を「人権問題」と捉え、日本政府が主張する立場とは必ずしも一致しない、沖縄の意思として国際社会に発信する意義は大きい。

 玉城知事は8日の記者会見で、名護市辺野古の新基地建設は本来国内で解決すべき問題ではないかという質問に対し「沖縄の置かれている状況がいかに不条理で、人権の尊重においても不平等な状態であるかを幅広く訴えていくことは重要だ」と答えた。

 これまで、基地から派生する騒音や環境問題、事件事故などにより、県民の人権は侵害されてきた。しかし、航空機騒音差し止めを求めた訴訟は何度も退けられ、有機フッ素化合物(PFAS)問題では汚染源と推定される米軍基地への立ち入り調査もままならない。事件・事故のたびに保革を問わず県議会の全会一致で求められてきた日米地位協定の抜本的改定も、いまだに実現していない。

 救済手段が見つからない状態で新たな基地が建設されれば、人権はさらに侵害されかねない。新基地建設を巡っては、県民投票では投票総数の71.7%、43万4273人の圧倒的多数が埋め立て反対に投票した。にもかかわらず、日本全体でみれば沖縄県民は少数派で、県民の声は一顧だにされていない。多数者が少数者の反対意見を抑圧するという、普遍的な意義を持つ「人権問題」だ。

 今回、玉城知事はスピーチだけでなく、人権理事会から任命され特定のテーマなどについて調査、報告する特別報告者との面談も予定している。国連の人権機関は、特に各国国内の手続きでは救済されない人権の侵害について重きを置いて支援してきた。名護市辺野古の新基地建設を巡る訴訟で敗訴が確定し、正念場を迎える中で国際社会の世論を喚起していけるか、手腕が問われる。
 (沖田有吾)