<社説>基地内コロナ感染 情報共有し疫学調査を


社会
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 米軍普天間飛行場に所属する軍属5人が新型コロナウイルスに感染したことが確認された。県内は8日、沖縄本島中部保健所管内在住の40代男性と、石垣市在住の50代女性の計2人の感染が69日ぶりに確認されている。

 今回感染した軍属について米軍は感染経路、直近の行動などの詳細を明らかにしていない。命にかかわる問題である。感染拡大を防ぐために、米軍は必要な情報を保健所と共有し、日米でただちに疫学調査する必要がある。
 米海兵隊は感染拡大の予防措置として海外から沖縄に入った隊員を14日間隔離している。今回軍属の感染者が、この隔離措置に置かれていたかどうか不明だ。隔離措置をとっていたとしても、不十分だった可能性もある。
 ジョンズ・ホプキンズ大学によると、日本時間7日午後9時現在、米国の感染者数は293万8625人で、死者は13万306人。米軍関係者は感染者が増え続けている米本国と直接往来できる。
 在沖米軍人は、基地内だけでなく3分の1は基地外で生活している。基地内であれば基地従業員との接触、基地外であれば県民と接触している可能性がある。
 日米は2013年、在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換について覚書を交わしている。感染症などが判明した場合、海軍病院と地元の保健所で相互に通報することが定められている。
 専門医が指摘するように「基地のフェンス一つでウイルスは防げない」のである。米軍の公衆衛生当局に迅速な対応を求める。
 一方、米国からの持ち込みでないとすれば、感染の発生は沖縄であり、県外から持ち込まれている可能性もある。
 県は6月19日以降、東京など6都道県からの来県自粛要請を解除している。国内の新規感染者数は4月中旬をピークにいったん減少し、5月25日に緊急事態宣言が全国で解除されたが、6月下旬から再び増加傾向にある。今後も増える恐れがあり、第2波への懸念が高まっている。
 特に東京都は8日、新型コロナウイルスの感染者が新たに75人報告された。都内の感染者数は今月2日に107人に上ってから6日連続で3桁の高水準が続いていた。累計は7千人を超えた。東京から各地への波及も懸念される。
 新型コロナウイルスは、クラスターを形成することで感染が拡大する。特に初期段階でクラスターを制御できれば感染拡大を一定程度制御できるとされる。
 そのために、感染者の過去の行動を調査し、共通の感染源となった場所を見つけ、その場の濃厚接触者を網羅的に把握し、感染拡大を防止する必要がある。
 疫学調査で実態が把握できれば、救急外来の警戒度をどれだけ高めて対応するかなどの策が講じられる。ことは急を要する。