<社説>高齢者再犯増加 社会で孤立防ぐ取り組みを


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 2014年に刑務所に入った2万1866人のうち65歳以上の高齢者は2283人で、統計を取り始めた1991年以降初めて1割を超えたことが15年版犯罪白書で明らかになった。高齢者は再犯率が高く、出所後に住居や仕事がないため犯罪を繰り返して服役期間が長期化するなど、刑務所が「福祉施設化」していることがあらためて裏付けられた。犯罪抑止という側面にとどまらず、福祉、医療的な支援の必要性が問われている。

 高齢者の大半の犯罪は窃盗で、しかも手口のほとんどは万引が占めている。高齢者の入所は91年には274人で全体の1・3%にとどまっていたが、その後毎年ほぼ増加している。14年の男女別の高齢者率をみると、男性が9・8%なのに対し、女性は16・4%と高く、女性は09年以降、1割以上で推移している。
 高齢者の女性は男性と比べて家族関係などが保たれている割合が高い。しかしその家族関係がいったん壊れると、犯罪へと走ってしまう傾向にあるようだ。
 白書によれば女性高齢者は「近親者の病気・死去」を背景事情に持つ者が窃盗再犯率が高くなっている。こうした理由から「配偶者の死去や病気の看護等に伴うストレスといった要因が再犯につながっている可能性もあると解釈し得る」と分析している。
 このため女性高齢者が起訴猶予処分などで釈放されたら、親族がいない場合は更生保護施設や自治体、社会福祉機関への橋渡しが重要となっている。現在、保護観察所が検察の依頼に基づき、釈放後に福祉サービスを受け、住居を確保するため、関係機関と調整する社会復帰支援策の試行的な取り組みを一部地域で実施している。さらに拡充して実施してほしい。
 現在、服役者に対する再犯抑止のプログラムは窃盗事犯に対する特有のものはないという。白書では女性高齢者について「加齢に伴う心身の不調等を始めとする高齢期の不安等が遠因となって万引きに至る」と分析しており、篤志面接や外部講師の講話などプログラム内容の充実化の必要性を説いている。ぜひ取り組んでほしい。
 こうした取り組みにとどまらず、高齢者を孤立させない施策なども必要だ。犯罪の矯正機関だけでなく社会全体で問題解決に取り組む必要がある。