<社説>飲酒運転 撲滅へ総合的な取り組みを


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 飲酒に絡んだ悲惨な事故がまた繰り返された。飲酒運転撲滅の取り組みを再確認する必要がある。

 那覇市の市道で41歳の女が酒に酔った状態で車を運転し、53歳の男性をはねて死亡させた。那覇署は現行犯逮捕した女を自動車運転処罰法違反(危険運転致死)の容疑で那覇地検に送致した。
 女の呼気から基準値の約6倍のアルコールが検出された。現場は飲食店が連なる狭い市道で、ブレーキ痕はなかったという。目撃者によると、車は火花を散らし、車輪が浮くほど傾きながら蛇行走行した。
 かなりの速度超過の疑いもあるが、女は飲酒運転は認める一方、事故の記憶はないと容疑を一部否認している。はねられた男性は約10メートル飛ばされて外壁に衝突し、亡くなった。痛ましい限りだ。
 「酒を飲んだら運転しない」。この当たり前のルールを私たちは何度も確認してきた。先日も県民大会があったばかりだ。飲酒事故が繰り返される現実をあらためて直視しなければならない。
 2014年に県内で発生した交通人身事故に占める飲酒絡み事故の割合は、25年連続で全国ワーストとなった。死亡事故に占める飲酒絡みの割合も2年連続で全国最悪という状況が続く。
 飲酒運転撲滅へ県警など関係機関だけでなく民間もそれぞれ取り組んでいる。だがその成果は十分とは言えない。飲酒運転がなくならない現状への強い危機感を県民が広く共有し、順法意識を喚起していかなければならない。
 ただモラルに訴えるだけではもちろん限界がある。飲酒運転の背景にはアルコール依存症などの問題も指摘されている。
 県が昨年12月からことし3月に行った調査によると、アルコール依存症が疑われる人の割合は男性14・0%、女性4・6%。それぞれ全国の2・3倍、5・7倍だ。深刻な数字であり、医療と連携した取り組みなどが不可欠だろう。
 若い世代の依存率も極めて高く、識者は「放置すれば大変な事態になる」と警鐘を鳴らしている。教育機関の役割もより重要となろう。
 飲酒運転による悪質な事故は全国各地で後を絶たない。悲惨な事故のたびに罰則は強化されたが、厳罰化だけで事故がなくならないのが現実だ。飲酒事故撲滅を目指し、全国のモデルとなるような総合的な施策を沖縄から推し進めたい。