<社説>北朝鮮と安保環境 辺野古との関連あり得ぬ

 北朝鮮の核実験をもって「辺野古新基地必要」キャンペーンを政府や一部メディアが展開するのではないか。元外務省主任分析官の佐藤優氏がそう警鐘を鳴らした。期せずして軍事評論家の前田哲男氏も「安全保障環境が悪化しており、辺野古移設を急ぐ必要がある」と政府が強調する恐れを指摘した。

 確かに、こと辺野古新基地に関しては利用できるものは何でも利用する政府だ。前述のような主張をしかねない。
 だが冷静に見ておきたい。佐藤・前田両氏の言う通り、辺野古は米海兵隊の基地であり、海兵隊が核兵器に対応することはあり得ない。だから「北朝鮮に対抗して辺野古」というのはすこぶる珍妙な理屈なのである。惑わされる必要はない。
 佐藤氏によれば、北朝鮮に水爆を作る能力はないというのが世界の軍事・インテリジェンス(情報機関)専門家の標準的な見解だ。
 水爆なら原爆の数百倍の破壊力で、仮に実験に失敗したとしても数十倍に達するとされる。だが今回の地震の推定規模は前回核実験よりも小さい。データで見ても考えにくいのである。
 さらに言えば、水爆の小型化は技術的な困難度が原爆とは桁違いだ。小型化しない限り、北朝鮮のミサイルの弾頭には搭載できないのだから、他国へ運ぶ能力が欠如していることになる。他国へ運べなければ自国で爆発するしかない。だから仮に北朝鮮の主張通り水爆を開発できたとしても、自国を危険にさらしているだけなのだ。
 前田氏の言う通り、実験は「政治的な示威行為」であり、「差し迫った脅威とは言い難い」。これが客観的に判断した「安全保障環境」である。
 ただ、従来のような前兆がなかった点で、独裁者による暴発の危険性はよりあらわになった。きちんとコントロールするには国際社会の包囲網を構築する以外あるまい。
 他方、今回の暴走でその包囲網が形成しやすくなった側面もある。6カ国協議は従来、日米韓が足並みをそろえても中ロとの間合いが難しかったが、今回、中国の反発は強い。5カ国の協調は十分可能になった。米ロの融和を促す機会ともなり得る。
 イラン核合意、キューバと米国の国交正常化もあるので、北朝鮮がそれらの国との関係に逃げ込むことも不可能だ。包囲網は既に整っているとみることもできる。国際社会の外交力が問われている。



琉球新報