<社説>ジカ熱感染拡大 水際の対策強化が第一だ


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 ブラジルなど中南米を中心に拡大し、知的障がいを伴うこともある小頭症との関連が疑われているジカ熱について、世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言した。緊急事態宣言は2014年8月の西アフリカでのエボラ出血熱感染以来だ。

 中南米を中心に32カ国・地域に広がり、欧米でも海外旅行帰国者の感染が確認されている。WHOは「(小頭症の急増は)異常な出来事」「中南米以外の地域に広がる可能性はある」と指摘、アジアやアフリカでの感染拡大に懸念を示した。
 このままでは世界的流行という極めて深刻な事態を招きかねない。感染拡大を何としても食い止めなければならない。
 ジカ熱は、ジカウイルスを持った蚊に刺され感染する病気で、発熱や頭痛、関節痛など比較的軽症といわれる。だが特効薬はなく、予防薬もない。ジカ熱と小頭症との関連を示す科学的な証拠はないものの、最大限の警戒が必要だ。
 人から人には基本的にはうつらないとされる。ただ媒介する蚊は日本にもいる。14年のデング熱のように、海外での感染者が国内で蚊に刺され、その蚊に刺された人が発症したケースもある。国内で広がる可能性は否定できない。
 日本政府はジカ熱を感染症法の「4類感染症」に指定し、監視や検疫を強めることを決めた。患者を診察した医師は保健所に報告しなければならないし、帰国・入国者に対して検疫所による診察や検査も可能になる。
 水際の対策強化がまず第一だ。日本にウイルスを持ち込まないことが肝要だ。当然ながら妊娠している人や妊娠予定の人は流行地域を訪問する場合には注意が必要だ。
 厚労省によると、ブラジルから日本に入国する人は推計で年間約14万人いる。8月にはリオデジャネイロ五輪・パラリンピックが開催され、ブラジルへの渡航者の大幅増が予想される。
 世界規模で人の往来が活発化した今の時代、感染症は地域を越えて広がる。日本にも飛び火する可能性を前提に、対策を強化していくべきだ。対応が後手に回ってはならない。
 感染拡大を防ぐため、世界各国が知恵を出し合い、流行終息に全力を挙げたい。日本は感染国の医療面の支援と同時に、国内の自衛策にも十分取り組みたい。