<社説>東日本大震災5年 復興に全力尽くせ 政府は優先順位誤るな

 街をのみ込んだ大津波の傷痕は今も被災地に残されたままだ。多くの被災者が仮設住宅で不自由な生活を送っている。住み慣れた土地を離れ、県外避難を余儀なくされている人も多い。放射線による健康被害も懸念されている。

 東日本大震災から5年を迎えた被災地の現状である。復興の足取りは重い。被災した多くの自治体は地域再生に苦しんでいる。
 5年間の復興事業を検証する必要がある。そして被災者が震災前の生活を取り戻せるよう、息の長い支援策を講じるべきだ。被災地や被災者への「寄り添いの心」を、より確かなものとしたい。

「復興五輪」の本末転倒

 大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した岩手、宮城、福島3県の仮設住宅で生活している人は5万8千人に上る。高台の住宅地整備が遅れている。原発事故避難も長引いている。
 被災者全員が仮設住宅を退去するのは、早くとも被災10年後の2021年3月になる見通しだ。その前年には「復興五輪」と銘打った東京五輪が開催される。
 華やかな五輪の陰で、被災者が仮設住宅で暮らし続けるのは本末転倒だ。仮設住宅での不安定な生活を放置したまま「復興五輪」に巨費を注ぎ込むようなありさまを国民は容認しないのではないか。
 膨大な建設費が批判された国立競技場をはじめとする五輪関連施設の整備より、被災地復興を急ぐべきだというのが国民の願いではないか。優先順位を誤れば被災地の復興はさらに遅れる。政府は復興事業の根本を考え直すべきだ。
 政府が16年度から復興事業の一部で最大3・3%の地元負担を求める方針を示しているのも大いに疑問だ。市町村の復興事業が頓挫しかねない。これも五輪経費を回すことができれば、地元負担は軽減できるのではないか。被災地再生は政府の全面的な支援で達成されるべきだ。
 政府の地元負担方針は、阪神大震災の10年間の復興事業費16兆3千億円のうち6兆円を地元自治体などが負担したことが念頭にある。しかし東日本大震災の被災地とは財政規模が違う。
 震災後初となる国勢調査速報値によると、前回調査に比べて人口は岩手が3・8%、宮城0・6%、福島5・7%減少した。震災犠牲者に加え、住宅建設など復興事業の遅れで人口流出が進み歯止めがかかっていないのだ。
 人口流出は被災地復興にとって大きな痛手である。自治体の窮状を考えるならば、復興事業の地元負担方針は改めるべきだ。政府に再考を求めたい。

被災地支援の心発信を

 警察庁によると、大震災の死者は1万5894人、行方不明者は2561人である。忘れてはならないのが、震災被害は今も進行中だということだ。避難生活による体調悪化で亡くなった「震災関連死」は3400人を数える。原発事故があった福島から県外に避難した住民は4万3千人にも上る。
 震災から5年がたち、国民の脳裏から被災地の惨状が少しずつ薄れようとしている。しかし、復興事業の真価が問われるのは、むしろこれからだ。
 被災者に対する公的支援策の多くが16年度から打ち切られる。そのことによって被災者が将来設計を放棄することがあってはならない。被災者支援を縮小してよいのか、議論し直してほしい。
 被災3県から沖縄県内に避難している人は昨年末現在で710人に上る。孤立しないよう悩みに耳を傾け、支援の手を差し伸べよう。
 米誌「タイム」は敗戦後の1949年、どこからも顧みられることがないまま米軍の圧政に苦しむ沖縄を「忘れられた島」として報じた。私たち沖縄は忘れられる苦悩を体験した地である。
 被災地の苦悩を私たちは忘れてはならない。激しい地上戦による犠牲とその後の苦難の歩みを踏まえた被災地支援の心を沖縄から発信していきたい。