<社説>政治活動届け出 生徒の参加を萎縮させる

 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる中で、生徒たちの政治参加を萎縮させかねない動きだ。

 愛媛県立の全高校が校則を改定し、生徒が校外で政治活動に参加する際の学校への事前届け出を義務化することを決めた。十分な議論を踏まえた上での判断なのだろうか。大いに疑問が残る。
 同県教委によると、昨年12月に県立高の教頭らを対象にした研修会で「政治的活動等に対する生徒指導に関する校則等の見直しについて」と題した校則の変更例が載った文書を配った。校内での政治活動や選挙運動は原則禁止し、校外で参加する場合は1週間前までに届け出るよう生徒に求める変更例を示した。
 県教委は「校則変更の指示はしていない。文書は参考資料にすぎない」としている。だが県教委と県立高校の関係などから考えると、文書は事実上、学校に届け出義務化を誘導するものとみられても仕方あるまい。
 政治活動参加への事前届け出の義務付けが事実上の「許可制」と化してしまい、生徒の自由な行動への圧力となることはないのか。届け出は、憲法が保障する思想・信条の自由などに抵触する恐れも否定できないだろう。
 事前届け出の義務付けに関し、愛媛県の県立高校関係者からは「生徒の安全確保のため」といった声がある。差別的言動などのヘイトスピーチ(憎悪表現)や暴力的活動から生徒を守るという趣旨のようだ。それは当然理解できる。
 だが届け出制が生徒の政治参加や社会参加の意欲自体を減退させてしまう懸念は消えない。そうなれば18歳選挙権導入の目的からしても本末転倒だ。何よりも生徒の自主性を尊重すべきであろう。
 選挙権年齢の引き下げを受け、文部科学省は昨年10月、高校生が放課後や休日に校外で行う政治活動や選挙運動を容認した。その一方で文科省は、ことし1月に学校現場向けに配布した「Q&A集」で学校外政治活動の届け出制を容認している。具体的な判断は現場に委ねるとしているが、同省のあやふやな対応も学校現場に困惑や疑念を広げているように見える。
 一番大切なのは高校生が自らあらゆる情報を見極め、物事を主体的に判断できる主権者としての能力を磨くことだ。そのための後押しをすることこそが学校現場には求められている。