<社説>熊本地震 耐震化100%を急ぎたい


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 熊本を震度7の強い地震が襲った。震度6強など、余震と思えぬほど強い余震も続発している。亡くなった方のご冥福を祈るとともに、千人以上に及ぶけが人の回復と、避難している多くの人々の安全を祈らずにはいられない。

 まずは建物の下敷きになった人がまだいないか、捜索を急ぎたい。土砂災害への警戒も必要だ。政府は現地対策本部を設けるとともに激甚災害指定を検討しているが、自治体と連携して復旧に全力を挙げてほしい。民間でも支援の輪を広げたい。
 現地は気温も上がりつつある。感染症を防ぐよう衛生管理が求められている。避難生活は強い不安にもさいなまれよう。行政は心のケアにも努めてほしい。
 今回、被害を広げたのは建物倒壊が続出したためだ。死者9人のうち建物の下敷きになった人は8人に上る。耐震化の必要をいやが上でも意識せざるを得ない。
 沖縄も、海域を含めれば九州と同水準で地震が起きている。だが県内は、防災拠点となる自治体の公共施設でさえ耐震化率が昨年3月末時点で84%にとどまる。全国より4ポイント低い。公立小中学校ですら86%と、47都道府県中45位だ。
 県内は復帰直後に校舎整備が進んだが、当時は塩害がひどく、「耐震補強」でなく全面建て替えを望む学校が多いという特殊事情がある。しかし、ことは命に関わる。教育関連予算を大幅拡大し、耐震化率を急ぎ引き上げたい。
 県は一昨年、本島南東沖で地震が続発した場合の被害想定を出した。死者1万人余、負傷者11万人余、建物全壊は5万8千棟余に上る。県内は1階を駐車場などとするピロティ(げた履き)形式の建物が多いが、これは揺れが増幅しやすい。民間でも耐震検査を徹底し、問題があれば補強をして耐震化率100%達成を急ぎたい。
 直下型地震は日本のどこでも起こり得る。しかし地震を予知できるだけの科学技術はまだない。震災に強い社会にする不断の取り組みが必要だ。
 今回の地震は、さほど取り沙汰されていなかった熊本で、内陸の断層の怖さを知らしめた。だが同様の断層は、知られていないものも含めれば国内で6千に上るともされる。日本は「地震の巣」なのだ。それなのに原発を再稼働させるのは正気の沙汰とは思えない。まず今回の断層に近い川内原発(鹿児島)の運転を直ちに止めるべきだ。