<社説>空調補助廃止 ならば米軍機飛行停止に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 なぜ基地周辺の学校で防音事業の空調(エアコン)維持費補助を一部廃止するのか。さっぱり分からない。

 中谷元・防衛相は「騒音が発生していなくても空調機を設置して維持費等を負担している公立学校との公平性を考慮した」という見解を示した。
 補助のない他の公立校と不公平だというが、米軍機が飛ぶことこそが不公平だ。補助を廃止するなら全米軍機の沖縄上空飛行を停止すべきだ。
 防音工事は防衛施設周辺整備法に基づく。「防衛という国民全体の利益のために特定の地域の住民が受けている不利益を公平の観点から是正する措置」である。防衛省はうるささの度合いに応じて4等級に分け、不公平な状態を補償している。
 防衛相の言う、騒音が発生していなくてもエアコン維持費を負担している公立学校と、騒音にさらされている学校を同列に扱って比較するのは無理がある。本来は比較対象にならないはずだ。沖縄ではあらゆる場所で米軍機による騒音が発生している。全国に比べて沖縄の学校の音環境こそ不公平なのだ。
 今回補助が廃止されるのは3、4級。県内に4級該当はなく、3級が廃止対象になる。では3級はうるさくないのか。3級のうるささの基準は50分の授業中に75デシベル以上の騒音が10回または80デシベル以上が5回以上である。環境省によると、70~80デシベルの騒音は主要幹線道路周辺(昼)や地下鉄車内、航空機の機内、セミの声に相当する。
 一方、文部科学省の基準は教室内が窓を閉めた状態で50デシベル以下、窓を開けた場合でも55デシベル以下が望ましいとしている。3級は明らかに文科省の基準を超えている。防衛省は文科省基準を満たさなければならないはずだ。
 財政難も説得力がない。垂直離着陸輸送機オスプレイ、無人機グローバルホーク、イージス艦など、安倍政権下で防衛予算は増え続け、自衛隊の装備品も強化の一途をたどっている。2016年度は史上初めて5兆円を突破した。これに対し今回廃止する県内の空調補助は2億1800万円。5兆円の中から捻出できないはずがない。
 学校の音環境の不平等を放置することは、憲法の理念に反する。補助金廃止を撤回できないなら、騒音発生源を除去するしかない。