<社説>米国の乱射事件 今度こそ銃規制実現を


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 痛ましい事件が起きた。悲劇が繰り返されるのはやりきれない。

 米フロリダ州オーランドのナイトクラブで武装した男が自動小銃などを乱射し、50人が死亡、53人が負傷した。銃乱射の絶えない米国でも史上最悪の事件となった。
 こんな事件を繰り返させてはならない。本質的な解決策に踏み込むときだ。銃規制を今度こそ実現すべきだ。
 1999年4月に13人、2007年4月に32人、09年11月に13人、12年7月に12人、12年12月に26人、15年12月に14人。米国で発生した銃乱射で死亡した人の数だ。
 乱射だけではない。米国では年間3万人以上が銃弾で命を落としている。うち約2700人が子どもや10代の少年少女だ。これだけの悲劇が起きながら、その繰り返しを防ぐための有効な手だてが取られないのは、そのこと自体が犯罪的だとさえ言える。
 乱射事件のたびに銃規制は論議されてきた。だが米国社会は開拓時代の名残で銃に頼る気風がいまだに根強い。合衆国憲法修正第2条は武装の権利を認めており、保守派は銃で自衛する権利は保障されていると主張する。
 しかし実際には自衛の範囲をはるかに超える、殺傷能力の高い銃が膨大な数で流通しているのだ。
 容疑者は家庭内暴力を頻繁に振るった人物とされる。過激思想に感化された発言を繰り返したとして捜査対象にもなった。そんな人物が殺傷能力の高い自動小銃を容易に入手し、周到に準備できた。その仕組みこそが問題なのだ。社会が問題解決能力を持っていることを、今度こそ実証すべきだ。
 容疑者の家族はアフガニスタン出身で、イスラム教の信者であることに焦点を当てる見方もある。確かに容疑者は事件直前、「イスラム国」(IS)指導者に忠誠を誓う意味の電話をしたとされる。ISに傾倒したのは事実であろう。
 だがイスラム教信者とIS支持者は同一ではない。むしろ信者の圧倒的大多数は無関係である事実を銘記したい。
 米大統領選候補のトランプ氏はイスラム排撃の発言をするが、事件でそれが共感を集めないか懸念する。何が悲劇の原因か、米国社会は正確に見極めてもらいたい。
 事件の舞台は同性愛者の集う場所でもあった。ヘイトクライム(憎悪犯罪)だった可能性がある。憎悪犯罪もまた人類が克服すべき課題であることを直視したい。