<社説>きょう6・19県民大会 命と尊厳取り戻そう 基地被害はもうごめんだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄の人々の命と人権、尊厳をいま、守らなければならない。ごく当たり前のことを求めるために、また県民は集まる。命と人権、尊厳が踏みにじられている現実が横たわっているからだ。

 米軍属女性暴行殺人事件を受け「被害者を追悼し、海兵隊の撤退を求める県民大会」が19日午後2時から、那覇市の奥武山陸上競技場を主会場に開かれる。
 主催者は追悼の気持ちを表すため、黒色のものを身に着けて参加するよう呼び掛けている。犠牲になった女性を多くの人と悼みたい。

 後絶たぬ米軍関係事件

 沖縄では米施政権下から44年前の復帰を経て現在に至るまで、米軍人・軍属による凶悪事件がとどまるところを知らない。特に女性が被害となる暴行事件は戦後間もないころから頻発していた。
 1948年2月6日のうるま新報(現琉球新報)には「恥じずに届けよ 軍関係の被害者に警告」と題して警察部長による次の談話が掲載された。
 「被害者は外聞を恥じ、災難を恐れ、そのまま泣き寝入りするものが多い。この種事件の続発を容易ならしめる恐れがある。もし不幸にして暴行に遭ったものは恥じたり、たたりをおそれて隠すことをせず、警察に申し出て事件の早期解決とこの種事件の絶滅のため協力してもらいたい」
 警察部長の異例の談話は当時、被害に遭っても申告せずに泣き寝入りする女性が多かったことを示すものだ。それは現在も変わっていない。事件として摘発されたのは氷山の一角にすぎない。警察部長が68年前に誓っていた「事件の絶滅」はいまだ実現せず、談話の中で示した懸念すべき状況は、変わることなく沖縄社会に存在したままだ。
 72年の復帰から2016年5月までの米軍関係者による刑法犯罪件数は5910件に上り、うち凶悪犯罪は575件に達する。軍隊の構造的暴力によって、県民の生命が危険にさらされ続けてきたのだ。
 事件だけではない。米軍による事故も後を絶たない。米軍機の事故だけでも復帰から44年間で540件を超え、墜落は46回を数える。年1回以上も墜落している計算だ。
 なぜ沖縄がこうした状況に置かれなければならないのか。県民の多くが抱いている強い疑問だ。理由は明白だ。日本の国土面積の0・6%の沖縄に74・46%の米軍専用施設が集中しているからだ。

 県民世論は全基地撤去

 琉球新報社と沖縄テレビ放送が5月30日~6月1日に実施した世論調査では、米軍関係の事件・事故を防止するために「沖縄からの全基地撤去」を望む意見が43%と最も多かった。再発防止には、沖縄から全ての基地をなくす以外に方法はないと思っている県民が多数を占めているのだ。
 それにもかかわらず、日米両政府は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設作業を強行し、新たな基地を造ろうとしている。訴訟和解で工事は中断しているが「辺野古が唯一」だとして方針を変えていない。世論調査では辺野古移設反対は84%に上った。民意無視の新基地建設は構造的暴力の行使にほかならない。
 1995年の米軍人による少女乱暴事件に抗議する県民大会で、大田昌秀知事(当時)は「幼い少女の尊厳を守れなかったことをおわびします」と述べた。今回の事件後、翁長雄志知事は女性が遺体で見つかった現場を訪れ「守れなくてすみませんでした」と女性にわび、二度と事件を起こさせないことを誓った。県民も等しく同じ気持ちでいるはずだ。
 これ以上、新たな犠牲者が出ることを私たちは決して容認することなどできない。だからこそ今回の県民大会を最後の大会にしなければならない。基地被害はもうごめんだ。命と人権、尊厳を取り戻すため、多くの人々と思いを共有したい。